長年キャンプを続けていると、色んなモノが溜まっていきます。
私も、キャンプ趣味が高じて、1部屋がキャンプ道具で埋まってしまっています(苦笑)。
とはいえ、キャンプで使う道具類は、日常生活でも使える物が多いため、我が家では色んなキャンプ道具を自宅でも使っています。
キャンプ道具の中でも、鍋やフライパンなどの調理器具は、キャンプと日常の両方で使える道具の代表でしょう。
そんな中でも、今回は「鋳物」にスポットを当てて見たいと思います。
鋳物とは
鋳物とは、金属を溶かして、砂などで作った型に流し込んで作られた製品です。鋳物は、型に流し込んで作られるため、複雑な形状にすることが可能で、鉄瓶からフライパンまで様々な物が作られています。
使われる金属は、鉄やアルミ、マグネシウム合金などです。これは、流し込むという工程があるため、高温で溶かした場合の流動性が高い金属でないと、型の隅々まで流れ込まないからです。
今回取り上げる鋳物は、鉄製の物となります。鉄は、蓄熱性に優れ、高温にも耐えるため、キャンプでの焚火料理などに向いています。
余談ですが、鋳物を作ることを「鋳造(ちゅうぞう)」と言い、鉄を叩いたり曲げたりすることで物を作ることを「鍛造(たんぞう)」と言います。
鋳物が良い理由
ムラなく綺麗に火が通る
鉄の鋳物は、蓄熱性が高いため、食材を入れた時に温度が下がり難く、均一に火が通りやすいという特徴があります。そのため、食材にムラなく綺麗に火が通るため、料理がより美味しく仕上がります。
焦げ付きにくい
鉄製なので、焦げ付くというイメージがありますが、一般的な鉄フライパンに比べて、鋳物の方が焦げ付き難いです。流石に、フッ素加工などのフライパンには敵いませんが、使い方さえ間違わなければ、焦げ付いてタイヘンと言うことにはなりません。
焦げ付き難い理由は、地肌にあります。鋳物の地肌は、細かい凹凸があるため、食材が鉄の表面に接している部分が少ないのです。特に、使い込んで油が馴染んだ状態の鋳物は、表面が油でコーティングされているため、焦げ付き難いです。
とにかく強くて一生モノ
鋳物は、耐久性が高く、高温にも強いのが特徴です。ですから、買い替える必要が無く、一生使い続けることができます。
例えば、鋳物のフライパンは、真っ黒に焦げ付いたとしても金属タワシでガシガシ洗うことができます。フッ素加工などのコーティングされているフライパンは、ガシガシ洗うと傷だらけになりますし、どんなに丁寧に使っても、コーティングが剥がれてくるので、いずれはダメになります。
また、耐熱性が高い(というか普通の使い方で壊すのは難しい)ので、熾火の中に突っ込んでオーブン料理を作るなど、ハードな使い方ができます。テフロン加工に代表されるフッ素樹脂系のコーティングは、耐熱温度が260℃のため、長時間高温に晒されると、コーティングがダメになるだけでなく有害物質が発生します。
そういった意味では、キャンプの焚火料理などでフライパンを火にかけっぱなしで忘れてしまったとしても、フライパン自体は問題ありませんので安心して使うことができます(勿論黒焦げにはなりますが・・・)。
鋳鉄製品は、アルミ等の製品に比べて高価な物が多いですが、買い替える必要が無く一生モノとして考えれば、安いと言えます。
育てる楽しみがある
ダッチオーブンに代表されるように、多くの鋳物は、使い込むことによって風合いが増していきます。鋳物の表面は、細かい凹凸があるため、そこに油などが染み込んでいきます。長年使い込まれ、黒光りするようになったダッチオーブンは、俗にブラックポットと呼ばれたりします。
また、殆どの鋳物は、最初にシーズニングを行う必要があります。シーズニングとは、鋳物の表面に油を馴染ませる作業のことで、くず野菜を油で数回炒めるのが一般的なやり方です。
こうやって、手をかけて育てていく楽しみも、鋳物の魅力の一つです。
鋳物のデメリット
鋳物のデメリットは、錆びることと、重いことです。
鋳物は基本的にコーティング等は施されていませんので、洗って使用後にそのまま放置しておくと錆びてしまいます。そのため、洗った後は、錆止めのためにオリーブオイル等を軽く塗っておく必要があります。
また、洗浄時にも注意が必要で、表面の油分が抜けてしまうと、次回の使用で焦げ付いたりすることに繋がるため、洗剤をつけて洗うのはNGです。油汚れが酷い時は、熱湯で洗い流すか、水を張って火にかけるなど、工夫が必要です。
重いという点については、鋳物は鉄製で厚みもあるため、アルミ製品などに比べるとかなり重くなります。
ただ、これらはメリットの裏返しでもあります。
コーティングされていないということは、それらが剥がれて痛む心配がないということになります。ですから、焦げ付いても金属タワシでゴリゴリ洗い落とせますし、油の焦げ付きが酷くなった場合は、バーナーで炙って焼き切るという方法もあります。これだけハードに使えるのは、シンプルな鋳鉄製品のメリットでもあります。
また、鋳物は厚手のものが多いことも、高い蓄熱性につながっており、食材を入れた瞬間の温度低下を抑え、均一に火を通すことができます。この蓄熱性が、肉などを美味しく焼き上げることができる理由です。最近は、軽い薄手の鋳物フライパンなども販売されていますが、結果として蓄熱性をスポイルしてしまっているので、肉を美味しく焼き上げたいなら、重い製品をおすすめします。
私の使っている鋳物
では、ここで私の使っている鋳物類を少しご紹介しましょう。
ダッチオーブン
鋳物のキャンプギアの代表と言えば、やはりダッチオーブンでしょう。
ダッチオーブンは、ローストチキンからポトフまで、様々な料理ができるのが魅力です。本格的にキャンプを始めたら、一番に買いたい調理器具です。
私の使っているダッチオーブンは、ロッジの10インチスーパーディープです。深さがあるため、様々な料理に対応しています。
更に、私が使用しているのは脚付きですから、焚火の中に放り込むような、豪快な調理ができるのが魅力です。
また、脚付きであっても、コールマンのガソリンツーバーナーであれば、問題無く使えるため、この組み合わせでよく使っています。
流石に、家庭で日常的に使うことはありませんが、キャンプでは主力の鍋です。
「ほ」スクエアスキレット
アウトドアショップWILD-1のオリジナルブランド「テンマクデザイン」の「ほ」スクエアスキレット。「ほ」は「まるほ」と読むのが正しい読み方。
この商品、長方形のスキレットなので、グラタン皿のような使い方が可能です。
蓋は、グリルパンとしても使え、肉などを焼くことができます。
更には、家庭用ガス台のグリルにも入るので、簡単なオーブン料理ができちゃいます。
これを使えば、本格的なローストビーフなども簡単に作れます。
とても便利なので、どちらかと言うと、キャンプより家庭の方が使っている回数が多いです。
スキレット
スキレットは、最も出番の多い調理器具です。
ステーキは勿論、ソーセージやアヒージョなど、日常からキャンプまで色んな料理で使っています。スキレットは、5インチ(12.7cm)から12インチ(約30cm)程度まで各種ありますが、私のおすすめは、6インチ(約15.2cm)と8インチ(約20cm)サイズです。
6インチは、アヒージョなどのちょっとした料理を作るのに向いています。
8インチは、スーパーなどで販売されているステーキが丁度乗るサイズです。
これらを複数組み合わせて使えば、おつまみからメインディッシュまで作ることができますし、スキレットのまま卓上で使えば、料理が冷めにくいというメリットもあります。
10インチ(約25cm)あれば、フライパン代わりになりますが、かなり重くなるのが難点です。
すき焼き鍋
関西人の私にとっては、ある意味、たこ焼き器よりも重要なのが、このすき焼き鍋です。
関西のすき焼きは、割り下を使わず、醤油と砂糖だけで調理します。
食べ方は、最初に鋳鉄製の鍋をアツアツにし、牛脂を引いたら牛肉を数枚入れて焼き、醤油と砂糖で味付けしたら、生卵にくぐらせて食べます。
最初に牛肉を焼いて食べるので、すき焼きなのです。最初から野菜等と一緒に煮込んでしまえば、すき焼きではなくすき煮になってしまいます(笑)。
ということで、肉を美味しく焼くためには、すき焼き鍋は欠かせません。
私の使っているすき焼き鍋は、義父から頂いたものなので、もう何十年も使い込まれた一品になります。
ジンギスカン鍋
ジンギスカンといえば北海道が有名ですが、最近はスーパーなどでも見かけるようになりました。
私は、元々、使い捨てのジンギスカン鍋を愛用してきたのですが、本格的なジンギスカン鍋が欲しくなり購入しました。
折角買うのなら、私の好きな松尾のジンギスカンが良いだろうということで、肉と鍋のセットを購入。南米の大河で購入したところ、クール宅急便で届いたので、鍋までカチコチに冷えていました(笑)。
松尾のジンギスカン鍋は、南部鉄器製。独特の形状が、観ているだけで食欲をそそります(笑)。
使ってみたら、やっぱり美味しく焼けました。もっと、早く買っておけばと思った一品です。
LAVA ホットサンドトースター
LAVAは、トルコの鋳物メーカーです。
この商品は、幅広で食パンなら2組同時に焼けるため、ファミリーで使うのにおすすめです。
また、2枚に分離して使うとグリルパンとしても使えるので、様々な料理に使えます。
片面でも1.7kgありますから、蓄熱性もバッチリです。
尚、LAVAはホーロー加工が施されているため、焦げ付き難く、錆びないので、メンテナンスもラクです。
OIGEN ホットサンドメーカー
OIGEN(及源)は、岩手県奥州市の南部鉄器メーカーで、その歴史は古く、創業は嘉永5年(1852)まで遡ります。明治に入り、及川源十郎鋳造所を開設、昭和22年には及源鋳造株式会社となり、現在に至ります。
OIGENのホットサンドメーカーは、把手まで鉄ですから、かなりの重量があります。ただ、オール鉄製ですから、遠慮なく焚火に放り込んで調理することができます。
把手も長いため、焚火料理に向いています。
鋳鉄製のホットサンドメーカーは珍しく、しかも南部鉄器らしいヘビー級の出来ですから、その蓄熱性は他のホットサンドメーカーとは一線を画します。十分に予熱していれば、片面1分づつで綺麗に焼きあがります。
このホットサンドメーカーで作ったホットサンドは、外がカリッと仕上がっていて感動すら覚えます。
鋳物のある生活
以上ご紹介した通り、我が家では、様々な鋳物を日常的に使っています。
確かに、鋳物は重くて使いづらいという側面はあります。特に女性だと、鋳物はおろか鉄製のフライパンでも重いと感じると思います。ただ、重さは調理方法である程度カバーできます。
スキレットで炒め物を作る場合、最初に軽く煙が出るぐらいまで予熱しておきます。そこへ、食材を投入し、菜箸などで軽く混ぜながら中火で炒めれば、アルミフライパンのように煽らなくても充分火が通ります。鋳物は蓄熱性が高いので、遠赤外線効果で食材の中まで綺麗に火が通ります。
スキレットを手で持って煽る必要はありませんから、重さを感じる場面は火にかける時と火から下ろす時に限定できます。
洗った後の、メンテナンス含め、ある程度手のかかる道具ではありますが、慣れてしまえばどうということはありません。
一生モノとして付き合える鋳物は、食を通して生活が豊かになるので、是非手に取って見てください。