2023年、オガワの新作テント「ピレウス(Pileus)」。
Pileusはラテン語で「頭巾雲」を意味します。
頭巾雲とは、積乱雲などの頂上部分に薄く広がる帽子状の雲のことです。
オガワのピレウスは、この雲の名を冠するように、白い幕体が空に向かって立ち上がる美しいスタイルが特徴です。
私も、GRAND lodge おおたかの森で展示されていたのを見て一目ぼれ。
ただ、テントだけでも既に6張り持っている私にとって、一目ぼれだけでは買う理由にはならず、この時は見送らざるを得ませんでした。
ところが、先日、GRAND lodge高尾が閉店セール中ということで、見に行くと、何と新品のピレウスが30%OFFで売っているではありませんか!!
これは、最早運命と諦めて、一目散にレジへ向かったことは言うまでもありません(笑)。
ということで、運命的に我が家にやってきたピレウスを早速レビューしていきたいと思います。
Pileus(ピレウス)の特徴
既に、GRAND lodge おおたかの森でのレビューを行っているので、今回は、実際に貼ってみて気が付いたことを中心にリポートします。
ピレウスは、アウターのクロスポールに幕体を吊り下げる、独特の形状をしたティピ型テントです。フロントに台形のポールを追加することで、開口部を広くしつつ、室内も広くなっているため、使い勝手と居住性に優れています。
形状的には、ローベンスのクロンダイクなどにも似ていますが、構造的には別物と言えます。
アウターのクロスポールは、天頂部でフライシートを吊り下げるだけでなく、両サイドをベルクロテープで固定していくことで、少し外側に広がった独特の形状を生み出しています。
更に、全てのガイロープを張ることで、独特の美しい形状が姿を現します。
出入口には、大きなメッシュ窓があり、巻き上げて留めることでフルオープンも可能。
前室が無く、庇もあまり大きく無いので、雨の日の靴の置き場などは若干困りますが、クロンダイクやアスガルドなどでも同様ですから、デメリットという程ではありません。
ピレウスは、この手のテントとしては珍しく、フライシートとインナーテントのダブルウォール構造になっています。しかも、グランド部分を除いで全てT/Cとなっており、遮光性の高さも大きなポイント。
インナーも、クロスポールに天頂部を吊り下げる形式のため、内部にポールが無く、とても広々としています。
フロアは、変形の6角形ですが、使い勝手は良く、大人4人でも十分なサイズが確保されています。特に、フロントポールのおかげで、前側の居住性が高く外から見る以上の広さを感じます。
両サイドには、三角形のメッシュ窓があるのですが、これが風通しに大きく寄与しています。実際に寝て見て分かったのですが、この三角窓から外気が入ってきて、上のベンチレーションから空気が抜けていくため、夏の夜でも快適に寝ることができます。
更に、後ろ側のフライシートをフルオープンにしてやれば、出入口のメッシュ窓から縦方向にも風が抜けるので、抜群の風通しを誇ります。
フロアシートは、バスタブ形状をしており、トグルでインナーテントに留めるタイプです。ですから、フロアシートを張らずにシェルターライクな使い方も可能。これは、去年の新作クーポラにも見られた形状で、シチュエーションに合わせて使い分けられる良い工夫だと思います。
ピレウスは、フライシートのみで設営することも可能です。
独特の形状のフライシートとしても楽しめるので、デイキャンプなどでも活躍します。
フライシートだけ先に設営し、後からインナーテントを取り付ける際は、取り付け位置が高いため、脚立などを用意しておく必要があります。手が届かない場合は、一旦クロスポールを倒してインナーテントを取り付けることになりますので一手間かかります。
また、後述する虫対策としても、インナーを先に畳む方がベターなので、脚立や踏み台を用意しておくことをおすすめします。
設営方法
今回、ピレウスの初張りも兼ねてお邪魔したのは、ファミリーパーク那須高原。アウトドアマンの田中ケンさん率いるteam OUTSIDEが運営しているキャンプ場で、様々なアウトドアイベントを行っており、初心者からベテランまで楽しむことができます。残念ながら、今年の9月18日でteam OUTSIDEは撤退してしまうとのこと。
ピレウスはは、設営に関しては、複雑な部類に入ります。マニュアルがいまいちわかりづらいこともあり、初回の設営では私も苦労しました。
それでは、詳細にご紹介していきます。
セット内容の確認
ピレウスのセット内容は、フライシート、インナーテント、フロアシート、スタンディングテープ、クロスポール、フロントポール、スチールペグ(17本)、ペグハンマー、ガイロープになります。
スタンディングテープを張る
ピレウスは、変形の6角形をしているため、スタンディングテープを張るのも若干苦労します。
初張りの時は、中央のテープを自分で接続する必要があります。長いピンがリングに接続されている部分に、テープを接続します。
先に、中央テープをピンと張った状態でペグダウンします。
その後、6角形を意識しつつ、テントの前後に当たるテープを平行になるように張り、ペグダウンします。
インナーテントを広げる
インナーテントを広げます。
別売のPVCシートを持っている場合は、この前に敷いておきます。私は、ピレウス専用シートを入手できなかったので、DODタケノコテントのグランドシートを流用しています。
左右の三角窓が中央テープを接続したリングの部分に来るように広げます。
広げ終わったら、インナーテントのフックをスタンディングテープに留めていきます。
この時の注意点として、前面の2つは留めないことです。留めてしまうとフライシートをクロスポールに取り付けることができなくなります。
フライシートを広げる
フライシートをインナーテントの上に広げます。
この時、前後に注意してください。後ろ側の中央には、ファスナーが付いているので、それを目印にしてください。
広げ終わったら、ベンチレーターを開いておきます。
建ててしまうと手が届かなくなってしまうので、インナーテントのベンチレーターも開けておきます。
フライシートとインナーテントを接続する
フライシートの内側には、ループが付いているので、そこにインナーテントの頂点に付いているトグルをひっかけます。
この時、一旦後部ファスナーを開ける必要がありますが、インナーテントを取り付けた後、再度ファスナーを閉めておくと、立ち上げ後の作業がしやすいです。
センターポールの取り付け
センターポールを組み立て、テントの上に置きます。
スタンディングテープのピンにポールを挿し込みます。
フライシートのフックをポールのクロス部分にあるリングにひっかけます(写真ではわかりやすくするために立てていますが、取り付けは地面に倒した状態で行います)。
この時、テント前面のフックを留めてしまっていると、テンションがかかってフライシートを取り付けることができませんので、間違って全部留めてしまった場合は、前面のフックをスタンディングテープから外してください。
ポールに、フライシートの両サイドに付いているベルクロテープで取り付けていきます。注意点としては、テープをリングを通して固定する手順を間違わないようにすることです。
先ず、テープをポールの下からリングの反対側へ出し、ポールの上からリングに通します。
その後、ベルクロテープを留めます。
こうすることで、幕体をポールに密着させることができます。
ポールを立ち上げる
ポールを立ち上げていきます。
この時、クロスポールを持って立ち上げるのではなく、フライシートの端をもって引っ張るのがコツです。
立ち上がったら、フライとインナーのフックをスタンディングテープに留めます。
ここで、全体のラダーフックを締めておきます。
フライシート後部の裾もペグダウンして、固定しておきます。
インナーテントを取り付ける
インナーテントの両サイドのトグルをフライシートのリングに留めていきます。
フロントポールを取り付ける
フロントポールを組み立て、前面のピンに差し込みます。
前面のフライシートをポールにかけ、ベルクロテープを留めます。
インナーテントのフックをポールに留めます。
フロントポール両端の部分にあるフライシートのリングに、インナーのトグルをひっかけます。
フライ前面のペグダウン
フライ前面の裾をペグダウンします。
更に、フライ前面の上部にあるループにガイロープを取り付けて固定します。
付属のガイロープには、3mが2本入っていますので、フロント上部のペグダウンに使用してください。
その後、残りの2mのガイロープを使って各所を張ります。
グランドシートを取り付ける
インナーテント中央のテープを張ります。
グランドシートのフロント側に気を付けて、シートを敷きます。
グランドシートのトグルをインナーテントに留めれば完成です。
使う上で押さえておきたいポイント
インナーテントのランタン用ループの位置
ランタンを吊るすループですが、位置が高すぎて、手が届きません(><)。
そのため、私はパラコードを通して、高さ調整を行いました。
こうしておくことで、ランタンに手が届くので、ON/OFFなどの操作が格段にやりやすくなります。
収納時の虫対策
実は、ピレウスの最大の欠点が、虫を寄せてしまうという点です。
T/Cの白い幕体はとても美しい反面、夜間に幕内でLEDランタンなどを使うと、多くの虫を寄せてしまいます。
しかも、寄せた虫が、フライシートとインナーテントの間に入り込むため、そのまま畳んでしまうと、シートの間に虫を挟んでしまうため、シートの汚れにつながります。
そこで、撤収時には、一旦インナーテントだけ畳んでしまい、その後、フライシートの天頂部に集まった虫を払い出してしまえば、きれいに畳むことができます。
インナーを畳む方法ですが、先ず、スタンディングテープに固定しているフックと、フライシートに固定しているトグルを全部外して、写真のような状態にします。
その後、インナーテントに付いている虫を払い、最後に天頂部のトグルを外します。この時、取り付け位置が高いため、踏み台が必須になります。参考までに、身長160cmの私の場合、高さ約35cmのクーラーボックスに乗ってギリギリでした。
使ってみた感想
使ってみての第一印象は、とにかく美しいという一言に尽きます。
T/Cの白い幕体が、青空にそびえる様は、南イタリアの街並みにも通じる美しさがあります(行ったことないけど)。
そして、オリジナリティあふれる形状は、他のキャンパーとは当面被ることは無いでしょうから、眼立つこと請け合い。
フライシート・インナーシート共にT/Cが使われているため、結露に強く、遮光性も高いのが特徴。
私が使った時は、夜中に雨が降ったこともあり、かなり湿度が高かったのですが、結露することなく快適に過ごすことができました。
初張りを行ったこの日は、日中気温が30℃を超える暑さでしたが、風があったこともあり、通気性の良さを実感しました。
天井が高く、ベンチレーションもあるので熱が籠り難く、前後左右からも風が通るため、日中でもテント内で過ごすことができました。
両サイドの三角窓は、外から見ると小さく感じますが、フルメッシュにするとかなり風が通るので、夜は三角窓を開けているだけで、十分涼しく過ごすことが出来ました。
後ろ側のパネルは、トリプルファスナーで開閉可能。
フロアシートが取り外しできるので、冬場に薪ストーブをインストールすることも可能です。
このテントは、フライシートにスカートがありませんので、風通しが良すぎで真冬向きではありませんが、上部のベンチレーションを閉じてしまえば、暖かい空気をテント内に貯めることができます。そういった点では、シングルウォールのサーカス等にくらべてダブルウォールとなるので、冬場でも見た目以上の実力を発揮しそうです。
まとめ
ピレウスは、とても美しいティピテントです。アウターのクロスポールを採用することで、美しさと居住性を両立している点は、特筆に値するでしょう。
また、見た目以上に通気性が良く、T/Cと相まって機能性の高さも評価できます。私が所有しているクロンダイクグランデと比べても、通気性の良さは上で、ティピ型やワンポール型テントの中では秀逸と言えるでしょう。五角形のうち2面をフルオープンにすることができるサーカスと比べれば、通気性に劣りそうですが、風向きによってはピレウスに軍配が上がります。
フライシートと、インナーテントのダブルウォール型というのも、通常のティピ型やベル型には無いポイントで、遮光性、遮熱性の面で有利です。
さて、このテントが映えるシーンと言えば、やっぱり冬のふもとっぱらかも知れません。
雪をかぶった富士山と、ピレウスのコンビネーションは、想像するだけでもグッと来るものがあります。
今から冬が待ち遠しいですが、先ずはこの夏、ピレウスを楽しみたいと思います。