子供の頃から凝り性な私。
コーヒーに凝りだしたのは、中学生の頃。喫茶店で、様々な豆の名前がメニューに並んでいるのを見て、種類の多さと味の違いに衝撃を受けたのがきっかけでした。以来、コーヒーを豆の状態で買って、ミル挽きで淹れるのが日課になっています。
私が使っているミルは、カリタのダイヤミルとポーレックスのコーヒーミル ミニ。
左がダイヤミル。右がコーヒーミル ミニ。 |
カリタのダイヤミルは、30年近く使っていますが、未だに現役。一方、ポーレックスのコーヒーミル ミニは、キャンプ用に購入した物です。
私は、ペーパードリップがメインで、たまにサイフォンやパーコレーターを使うので、粗びきから中細引きあたりがメインになります。そういった用途では、ダイヤミルが高精度で満足していました。コーヒーミル ミニも、キャンプ場での早朝の一杯を入れるのには欠かせないアイテムになっています。
そんな私が、近年興味を持っていたのが、数万円以上する高級ハンドグラインダーです。最高峰の呼び声高いCOMANDANTE(コマンダンテ)から、タイムモアや1Zpressoなど、様々な種類が出ています。
共通するのは、刃がステンレス製だという点です。日本のハンドミルは、基本的にセラミック製で、豆をすり潰す動作となっていますが、ステンレス製の刃は豆を切る動作になります。豆を切ることによって、香りをより際立たせ、均一性の高い挽きあがりになるのだとか。
当然、私もドイツ製のコマンダンテに目を付けた訳ですが、如何せん高い。安くても3万5千円はしますし、最近では値上がりが激しく4万5千円台にまで高騰しています。タイムモア(中国製)や1Zpresso(台湾製)も良いのですが、イマイチ触手が動きません。
勘違いしないで欲しいのですが、中国製や台湾製だから性能が劣るということは最早ありません。近年の金属加工は、CNC(コンピュータ数値制御)によるマシンカットが主流ですから、高精度の工作機械と、それを使いこなすソフトウェア技術があれば、品質面では日本製と変わらないのです。ですから、深センあたりの中国企業は、日本の金属加工会社の技術を凌ぐ物があり、結果として日本の失われた30年にも繋がっています。
閑話休題、本題に入りましょう。
そんな私が選んだのが、ZASSENHAUS(ザッセンハウス)のBarista Pro(バリスタプロ)です。
ZASSENHAUSについて
ザッセンハウスは、1867年創業と150年以上の歴史を持つドイツのミルメーカーです。古くから、金属製ミルの加工・製造を行っており、その形状は100年以上前に完成されたもので、以来殆ど変えいていないそうです。
特に、1950~60年代のオールドザッセンと呼ばれるミルは、アンティークとしての価値も高く、マニア垂涎のアイテムとなっています。この辺は、同じくドイツのレンズメーカーであるカールツアイスと通じる所があり、工業国ドイツらしいメーカーと言えるでしょう。
そんな歴史あるザッセンハウスですが、2006年に倒産。その後、Kuchenprofi(クーヒョンプロフィ)が買収し、再スタートを切っています。
ZASSENHAUS Barista Pro
出典:ZASSENHAUS coffee & camp |
バリスタプロは、新生ザッセンハウスが、コーヒーミルのフラッグシップとして開発した製品です。ミルの形状は、伝統に従ってほとんど手を加えておらず、素材をステンレス鋼にアップデートしています。
ザッセンハウスのコーヒーミルと言うと、黄金に輝く「ハヴァナ」がキャンプ界隈では有名ですが、ハヴァナはトルココーヒーを挽くために造られたミルです。真鍮製のボディに彫られた目のような文様は、トルコをイメージして入れられたものです。
出典:ZASSENHAUS coffee & camp |
トルココーヒーは、深煎りの豆をパウダー状に挽いたものを煮出して作ります。そのため、ミルとしては極細挽きに主眼が置かれており、中挽きから粗びきは不得意です。ですから、エスプレッソなどには向いていますが、フレンチプレスやパーコレーターには向いていません。
パッケージと付属品について
バリスタプロのパッケージは、ボール紙製の箱です。
正直、箱の品質はフツーで、Apple製品などに比べると高級感はありません。まあ、箱で豆を挽くわけではありませんが(笑)。
箱の側面に印刷された、髭面の兄ちゃんの笑顔が何となく笑える。 |
蓋を開けると、先ずはマニュアル。残念ながら日本語はありません(苦笑)。
私の購入した「ZASSENHAUS coffee & camp」さんは、日本語のマニュアルを入れてくれていたので助かりました(笑)。
中蓋を取ると、本体とご対面。
本体以外には、クリーニングブラシとポーチが付属しています。
構造について
バリスタプロの構造は、意外なほど単純です。
トップの軸受けのネジを外すと、簡単に分解できます。
軸受けのネジは、ミルの回転を考慮して逆ネジになっています。
主軸に対して、ボールベアリングが2個。これが、スムースな挽きとブレない安定性を両立させています。
挽き目調整のノブを反時計回りに回せば、全て分解できます。
バリスタプロが、コマンダンテと違う最大のポイントは、固定刃の方も簡単に分解できることです。
刃を固定しているリングは、細いドライバーでも回せますが、カニ目レンチがあれば簡単に外せます。
分解・清掃が簡単というのは、毎日コーヒーを飲むようなコーヒー好きには重要なポイント。
全て分解すると、この通り。
部品点数は決して多くありませんが、合理的な構造と高精度な加工が光ります。
ハンドルノブは、天然木のビーチ材を使用。
ハンドルに挿し込むだけと単純な構造ですが、中に磁石が入っており、カチッとはまります。
粉受け(ストッカー)は、筒状の本体に底板を嵌めて作られています。
ここが、私の唯一の不満点で、バリスタプロは高級ミルですから、できればアルミ削り出しにして欲しかった所です。
初めて使用する時の注意点
バリスタプロは、心臓部がステンレス鋼ですから、最初に使用する時には中性洗剤で洗うのがベターです(ベアリングは除く)。基本的には、組み立て時にクリーニングされているようですが、CNC加工時の機械油が残っていると、豆の香りに影響が出ますから、しっかりと洗浄しておくと安心です。
その点、分解しやすいバリスタプロは、洗浄する上でも便利です。
尚、マニュアルには、クリーニングと刃の慣らしを兼ねて、中細引きで小さじ1杯程度の生米を挽くように書かれています。
挽き目の調整と挽き具合について
挽き目の調整は、ミルの下にあるダイヤルで調整します。ダイヤルは1周12段階で、スペック上は60段階(約5周)とされています。
最初に細引き方向にダイヤルを回し、回らなくなったところから粗びき方向へ1周したところが細引きになります(12段階)。2~3週目が中挽き(24~36段階)、4~5周目が粗びき(48~60段階)となります。
攻めれば、5~6段階目での超極細挽きもできそうですが、実用上は、12~60段の48段階といったところでしょうか。
さて、いよいよ豆を挽いていきます。
ホッパーの容量は、20g程度と多くはありません。ペーパードリップで2杯分程度です。
本体はアルミ製で、細かいローレット加工が施されているため、しっかりと握ることができます。
挽き具合ですが、先ず第一印象として、サクッ、サクッと豆が切れる手触りと音が最高に気持ち良い!!
そして、とにかく軽いことです。実は、ハンドルと軸の接合部には僅かな遊びがあります。
知らないと、精度が悪いように思うかもしれませんが、この遊びが余剰な力を軽減し、安定した回転に繋げています。
遊びがあるため、テーブルの上に置くと、ハンドルが自重で少し下がっている。 |
更に、角度が僅かに上下することで、力のかかり具合が絶妙にコントロールされているのです。
挽きあがりも早く、中挽きで1杯分(10g)なら、約40回転、30秒程度で終了。カリタのダイヤミルなら数分かかるので、この差は大きいです。
そして、挽きあがりの粒の揃いも文句無し。ネットではやや微粉が多いとか言われていますが、微粉も味のうち。私は気にしません。
味と香り
挽いた豆を、ドリッパーへ入れると、コーヒーの香りが漂います。この時点で、他のコーヒーミルとは違う気がします(笑)。
味については、豆の果実感を感じるフレーバー豊かな仕上がりが特徴的です。やはり、豆を潰すのではなく、切るという動作から生まれるのだと思われるこの味と香りは、バリスタプロの看板に恥じない仕上がりと言えるでしょう。
中細引きをV60でドリップすれば、すっきりとして香りの引き立つ一杯になりますし、粗びきをパーコレーターで淹れれば、オイリーで濃厚な味わいになります。
粗挽きでも、粒の大きさが揃っている。 |
粗挽きをパーコレーターで淹れると、よりオイリーに。 |
微粉は残るが、気にならない量。 |
色々と飲み比べてみましたが、正直、ここまで味が変わるとは思っていなかったので、衝撃を受けました。
一方で、気が付いたのが、淹れ方がよりダイレクトに出るということです。V60で淹れる時に、途中でよそ見をしていて、湯を落とし切ってしまったのですが、案の定、雑味が多く出ました。ダイヤミルなどで挽いた時にはそれ程までに味の差を感じなかったのですが、バリスタプロは、淹れ方の差が味にはっきりと表れます。これは、良い意味で豆のポテンシャルを引き出した結果だと思われ、淹れる腕も試されるミルだと言えるでしょう。
ポーレックス コーヒーミル ミニとの比較
さて、バリスタプロの味は一通り分かったので、他のミルと比べて、どれぐらいの差があるか実験してみました。
比較するのは、ポーレックスのコーヒーミル ミニ。
テストに使用した豆は、カルディのブラジル。
抽出方法は、ハリオのV60を使用したペーパードリップ。
先ずは、1杯分(10g)を挽くのに要する回数をカウントしました。
コーヒーミル ミニ:96回
バリスタプロ:40回
バリスタプロがコーヒーミル ミニの半分以下という結果になりました。
しかも、バリスタプロの方が軽く挽けるので、挽きやすさは圧倒的にバリスタプロが上です。
粒の状態は以下の通り。
コーヒーミル ミニ |
バリスタプロ |
では抽出していきます。
コーヒーミル ミニ |
バリスタプロ |
コーヒーミル ミニは、表面が微粉の影響で粘土状になっています。一方のバリスタプロは、挽いた豆の粒がそのまま見えます。
さて、味覚テストの結果は、予想以上に味の差が出ました。
バリスタプロの方が、より香りが高く、味も酸味やコクなどの豆の複雑な味が良く出ています。コーヒーミル ミニは、それに比べると、やや香りが劣り、味も苦みが勝っていて単調に感じます。
言い換えると、バリスタプロは、香りや酸味を上手く引き出しており、豆の素性が良く分かります。ぶっちゃけ、コーヒーは、焙煎で味が決まると言えるほど、豆の差より焙煎の差が出るのですが、バリスタプロで挽くと、豆の差をより感じることができます。
もう、これでバリスタプロがキャンプ道具一軍入り確定です。
いや、キャンプは愚か、日常使いでも、これ以外に使う気になりません(笑)。
ZASSENHAUS coffee & camp
さて、私がここまで惚れ込んだZASSENHAUS Barista Pro。実は、購入に当たってお世話になったのが、ZASSENHAUS coffee & campの佐藤さん。
先日の、TOKYO outside FESTIVAL in 昭和記念公園で出店されており、コーヒーにまつわるお話を色々と聞かせて頂きました。実は、前述のハヴァナの下りなど、全部佐藤さんの受け売りです(苦笑)。
佐藤さんの、ザッセンハウスに対する熱意と人柄が、私の背中を押して頂き、今回の購入に繋がりました。
佐藤さん、その節はどうもありがとうございました(^o^)/~
ZASSENHAUS coffee & camp
https://zassenhaus-coffee.stores.jp/