ここ数年で、急激に普及したアウトドア用薪ストーブ。
最早、冬キャンプに薪ストーブは欠かせないアイテムとなりつつあります。
元々、キャンプ向け薪ストーブは、アネヴェイやG-Stoveなどの海外製品がメインで、ホンマ製作所の製品も、キャンプ向けでは無く、農家などで使用する屋外用薪ストーブ兼調理器具として販売されていました。
それらを、一部のディープなキャンパーが使っていたのですが、ここ数年でSNSを中心に広まり、今では多数のブランドがキャンプ向け薪ストーブを販売するようになりました。
中でも、アウトドアショップ「WILD-1」は、5~6年前から薪ストーブを自社ブランド「テンマクデザイン」でラインアップしており、積極的に販売しています。
そんなテンマクデザインが、薪ストーブメーカーのWINNERWELLとコラボしてできたのが「ウッドストーブ」シリーズです。
テンマクデザインの「ウッドストーブ」シリーズは、2018年に販売が開始されました。当初は、MとLだけでしたが、その後ソロ向けにSが追加され、2019年には、側面に大きな窓を追加した、「サイドヴュー」が登場。以降、毎年秋口に販売が開始されると、争奪戦となるほどの人気商品になりました。
尚、コラボ元のWINNERWELLからは、同等品の「ウッドランダー」シリーズや、本体が角型の「ノマド」シリーズなども販売されています。
winnerwell nomadview M 出典:winnerwell |
私は、以前からテンマクデザインの「iron-stove ちび」を愛用しています。
この薪ストーブは、庫内が広くてオーブン料理もできるので大変気に入っていたのですが、問題点があります。実は、商品名はちびとなっていますが、幅・奥行きが約50×40cmと段ボール1箱分あり、重量は20kg近くと、全然ちびじゃないのです。
元々、一回り大きくて分解可能な「iron-stove」という商品があり、それに比べての「ちび」だったので、商品名としては間違っていないのですが、追加した煙突もあわせると、段ボール2個分近くのスペースが必要で、ちびなのにでかくて運ぶのが大変でした。
そんなこともあって、もう少しコンパクトで軽い薪ストーブが欲しいと思っていた矢先にリリースされたのが、この「ウッドストーブ」でした。
さて、いくらコンパクトな薪ストーブが欲しいとは言え、「2台もいらんやろ!!」という嫁の一言により、毎年却下され続けいたのですが、1月下旬にWILD-1に行ったら、何と35%オフで売っているではありませんか!!
私「こんだけ安くなってたらええやんな!?」
嫁「・・・アホは焼かな直らんか・・・┐(´д`)┌ 」
ということで、発売から4年目にしてようやく購入に至りました(笑)。
本当はサイドヴューが欲しかったのですが、店頭では既に売り切れていたため、ノーマルのMにしました。
ウッドストーブのMサイズケース付き2点セットに、3重煙突、煙突ブラシ、煙突3本を追加購入。 |
さて、前置きが長くなりましたが、テンマクデザインの「ウッドストーブ」をご紹介していきたいと思います。
ウッドストーブシリーズについて
ウッドストーブシリーズは、ノーマルのS・M・Lに加え、MとLには両サイドに耐熱ガラスの入った「サイドヴュー」がありますので、現在のラインアップは5種類となります。
※Sサイズは、ガラス窓の装着がサイズ的に不可能なため「サイドヴュー」の設定がありません。
各サイズのスペックをまとめたのが下記の表になります。
材質はステンレスで、厚みもあるため、耐久性が高いです。煙突も当然ステンレスですが、他の薪ストーブの煙突に比べて厚みがあり、結合部分もしっかりしているため、とても使いやすいです。
各サイズとも、バタフライ式の棚が折り畳めるため、収納時はW(幅)がかなりコンパクトになります。
サイドヴューは、耐熱ガラス窓が追加されているため、収納サイズが表記より約30mmほど大きくなります。また、重量も1kg前後増加しています。
煙突のパイプ径は、本体サイズに合わせて大きくなりますので、各サイズでの互換性はありません。また、長さもそれぞれ異なりますので、テントの天井高に合わせて追加購入する場合は注意が必要です。
ウッドストーブの特徴
ウッドストーブは、アヴェネイやG-Stoveと同じ筒形の薪ストーブです。
薪は、前扉から奥に向かって挿入する形式で、前面の吸気口から煙突へとスムーズに排気されるため、とても燃焼効率が良いのが特徴です。
構造的には、ロケットストーブに近い形状のため、吸気口を全開にしていると庫内の薪が一気に燃え、かなりの高火力となります。
ウッドストーブとロケットストーブの比較図 |
着火も非常に簡単で、薪を挿入し、扉付近に着火剤を置けば、着火剤の熱が自動的に奥へと流れるため、前から順次燃え広がっていきます。
ウッドストーブには、ダンパーも付いているため、吸気と排気の両方で火力をコントロールすることができます。
ダンパー全閉状態 |
ダンパー全開状態 |
吸気口を全閉にしていても、結構な火力があるため、本体温度を300℃程度に保つためには、ダンパーも閉じ気味にする必要があります。
マニュアルによると、適正温度は200~350℃となっていますので、この範囲に収めるには、ダンパーは必須と言えるでしょう。
本体には、バタフライ式のステンレス棚が付いているため、フライパンやケトルなど様々な物を置くことができます。
天板には丸い蓋があり、直火料理も可能です。火力はかなりのもので、フライパンで調理する場合、ソーセージなどは一瞬で焦げてしまうぐらいです。
テント内で使う場合は、煙や炎が出ることが気になると思いますが、ダンパーを全開にしておけば直火の丸穴から空気が吸い込まれるため、煙や炎は煙突の方に流れて室内には殆ど漏れません。
脚は3本で、バネで固定できるようになっています。脚を開いた時の本体下から地面までは、半円形の底の最も低い位置から約32cmあります。
Mサイズは、それほど多くの薪を入れることができないこともあり、グランドへの輻射熱ダメージは殆どありませんが、芝生の上で使用する場合は、念のためスパッタシート程度は敷いた方が良いです。
3重煙突について
プロテクターは、よくある網目の物ですが、3重煙突は煙突を中心に外側にパイプがあり、その更に外側にスリットの入った覆いが付いています。
煙突によって熱せられた空気は、外側のパイプ内に沿って上昇し、上部のスリットから排気されます。そのため、3重煙突内は熱がこもり難くなっており、外側の覆いは、手で触れる程度の温度にしかならないようになっています。
下側はほんのり暖かい程度。 |
この辺りまでは手で触れる温度だが、上の四角いスリット近くは、かなり高温になる。 |
3重煙突は、外側に覆いがあるため、雨や雪が入り難いというメリットがあります。通常のプロテクターでは、網目の部分から雨や雪が入るため、酷い場合は煙突周りに水溜まりができてしまうことがあります。
注意点としては、トップ部分は、かなり高温になるため、この部分が十分にテント幕から出ている必要があります。
火力
ウッドストーブは、既に述べた通り、筒形でロケットストーブに近い形状のため、とても燃焼効率が良く、高火力です。
逆に、燃焼効率が良すぎるため、焚き始めや薪の追加時以外は、吸気口を絞っておかないと、直ぐに本体温度が400℃以上に達します。
実際、直径10cm程度のクヌギ薪を焚いたところ、直ぐに400℃オーバーとなり、吸気口を絞っても中々400℃を切りません。本体から煙突への空気の抜けが良すぎるので、吸気口を全閉にしても、煙突効果の方が高く火力が落ちにくいのです。
そのため、300℃程度に落とすためには、ダンパーによる調整が欠かせません。
ダンパーで、煙突の空気の流れを悪くすることで、燃焼がゆっくりになり、本体温度を下げることができます。
実は、ここが重要で、煙突の抜けが良すぎると、燃焼による熱エネルギーが、煙突から排出されてしまい、暖房効果が落ちるのです。勿論、高温の煙によって煙突の温度も上昇しますから、煙突からの暖房効果は上がりますが、排煙によるエネルギーロスの方が大きく、トータルでは燃費が悪くなります。
ですので、煙突まで真っ赤になるぐらい勢いよく燃やしてしまうと、薪がムダになってしまいます(苦笑)。
ウッドストーブは、最初からダンパー付き煙突が付属しているので、火力の調整がしやすいです。
収納について
各モデルとも、スパークアレスターを含む煙突6本を本体内に収納することが可能です。
本体に煙突を収納するためには、煙突を2本入れたら先にロストルを入れて、そのロストルを持ち上げながら煙突を入れていく必要がありますので、多少のコツが必要です。
テンマクデザインのサイトには、煙突の収納方法が詳しく解説されていますので、そちらを参考にしてください。
MとLのセットには、収納ケースが付属しており、これがまた優秀です(Sは別売)。生地がしっかりしており、左右にはポーチも付いているため、グローブや温度計などを収納できます。
また、ウッドストーブは、底が半円形のため、左右に1本づつ追加の煙突を入れることができます。
私は、追加で煙突3本と、煙突ショート、3重煙突を購入しましたが、煙突1本と3重煙突以外は、収納ケースに入るので、とてもコンパクトにまとめることができて重宝しています。
ケースに入りきらなかった煙突は、ケース上部のベルトで留めることができる。 |
豊富なオプション品
ウッドストーブは、オプション品が充実していることも特徴の一つです。
特に、煙突の排熱を有効活用できる、ウォータータンクやパイプオーブンは魅力的です。
ウォータータンク 出典:テンマクデザイン |
パイプオーブン 出典:テンマクデザイン |
煙突関連も豊富で、45度や90度に曲げられるベントパイプや、通常の煙突の半分の長さのショート煙突など、テントに合わせて煙突を引き回すのに便利なアイテムが揃っています。
出典:テンマクデザイン |
出典:テンマクデザイン |
更には、フラッシングキットまで用意されているので、煙突ポートの無いテントでも幕内で使うことができます。
出典:テンマクデザイン |
フラッシングキットは、S/Mの三重煙と、S/M/L兼用煙突プロテクターに対応していますので、どのサイズのウッドストーブでも使用可能です。
出典:テンマクデザイン |
ここまでオプション品が充実している薪ストーブは珍しく、他にはG-Stoveぐらいしかありません。というか、ウッドストーブは、G-Stoveをベンチマークに開発されていると思われます。
ウッドストーブはMサイズが良い理由
さて、私がMサイズを購入したのには、いくつかの理由がありますが、決め手となったのは、サイズ・重量が手頃であることと、35cmの薪が使えることです。
サイズ・重量に関しては、既に持っているirom-stoveちびよりコンパクトな物が欲しかったこともありますが、筒形の薪ストーブは使い方が限定されるため、あまり大きくても汎用性に欠けるためです。
筒形の薪ストーブは、扉が小さいため、庫内にスキレットなどを入れて調理するのには向いていません。Lサイズでも扉の幅は20cm弱ですから、小さめのフライパン程度しか入れる事が出来ませんので、庫内を使った料理は厳しいです。
一方、Lサイズは多量の薪を入れることができますから、最も高火力になります。庫内調理が出来なくても、オプションのパイプオーブンを使うという手もありますから、火力優先であればLサイズもアリです。但し、煙突も含めてサイズ・重量共に増えるため、3重煙突まで含めると、20kg近くになりますから、トータルとしてはかなりの重量になります。
私は、暖房用途プラス天板での調理程度に必要な機能を絞っていたので、Mでも充分と判断しました。
Mでも12インチのダッチオーブンを乗せて調理可能。 |
使用できる薪のサイズについては、35cmサイズの薪が使えることが絶対条件になります。多くのキャンプ場で販売されている広葉樹薪は、基本的に35cm程度の物が殆どだからです。
薪の長さは、規格が決まっているわけではありませんが、大抵35cm前後か40cm程度の2種類に分けられます。家庭用薪ストーブは、40~45cm程度の薪に対応しているので、市販の薪ストーブ向けの薪は40cm程度の長さになっています。一方、キャンプ向けの薪は、40cmだと少し大きすぎるので、35cm程度のものが主流となっています。
ウッドストーブのSサイズは、薪の長さが最大30cmまでしか対応していないため、キャンプ場で販売されている薪は、カットして使わなければならない場合が出てきます。薪は、割るのは比較的簡単ですが、切るのはとても時間がかかるし面倒なので、切らずに使えるサイズがベターということになります。ですから、Sサイズは小さすぎるため、バイクツーリングなど積載量に制限が無い限りM以上がおすすめとなります。
キャンプで実際に使ってみて分かったこと
北軽井沢のoutside BASEにて |
さて、折角購入したのですから、早速キャンプで使ってみました。
先ずは、やっぱり火付きの良さです。薪ストーブに中割の薪を2~3本入れて、着火剤を入口付近で点火しておけば、あとは奥まで自動的に燃え広がってくれるので、着火に失敗することはありません。
温度上昇も、箱型の薪ストーブより早いため、直ぐに暖まります。熱量は、より多くの薪が入るiron-stoveちびには負けますが、ウッドストーブでも、外気温プラス25℃は軽く出たため、十分に使えるレベルです。私の使っているクロンダイクグランデは、最大直径5mの大型テントですから、これより小さなサーカスなどのワンポールテントなら、プラス35℃は堅いです。
ただ、私は就寝時の暖房確保のために石油ストーブと併用しているので、Mサイズでも充分な火力でしたが、薪ストーブのみに頼る場合は、大型テントならLサイズの方が良いかもしれません。
結局、外気温プラス何度まで上げたいか、深夜を考慮するかなど、目指すスタイルにもよるので、この辺は判断が難しい所です。
外気温マイナス10℃でも、ウッドストーブと石油ストーブを併用すると、幕内温度は簡単に30℃を超える。 |
運転温度ですが、やはり300℃程度に抑えるのが難しく、どうしても400℃付近で運転することになります。ダンパーを開け気味にしておくと、直ぐに煙突が赤くなってきますし、長時間運転していると、どうしても前から薪を押し込むことで、熾火が後ろに溜まり、本体後部まで赤くなってきます。
ただ、本体含めオールステンレス製ですから、多少高温になっても問題は無さそうです。ウッドストーブに使われているSUS304は、耐熱温度が700~800℃ですから、400℃程度であれば問題無いと言えます。一応、マニュアルでは適正温度が350℃までとなっていますが、多少の余裕がある値と言えます。
尤も、高温に強いステンレスと言っても、600℃ぐらいから組成が変化してくる(錆びやすくなったり脆くなったりする)ので、あまり高温になりすぎないように注意することは必要です。煙突が真っ赤になっている状態は、軽く600℃を超えている恐れがあるので、そうなる前にダンパーを絞る必要があります。
調理についてですが、天板が小さいので、あまり期待はしていなかったのですが、ソーセージと目玉焼きを焼いたり、ホットサンドを作ったりと、予想以上に使えました。
直火でフライパンを使って高温調理が可能。 |
ホットサンドは、天板上でじっくり加熱。 |
一番よかったのは、天板と平行にステンレス棚が付いているので、これを活かして火力調整ができることです。
薪ストーブを調理に使う場合、火力調整が難しく、特に鍋をとろ火状態で保温したい時などは、トリペットや鉄製の瓶敷などを使って調整するのですが、ウッドストーブは、鍋をステンレス棚の方にずらすことで、自由に火力調整が可能です。
温まったおでんの鍋をステンレス棚へずらして保温している。 |
強火~中火は天板のフタを開けて直火、弱火は天板上、とろ火はステンレス棚にずらしてと、かなり自由に火力調整ができるので、思った以上に調理に使えました。
まとめ
以上、色々と使ってみたことも踏まえてまとめると、以下の通りとなります。
- 火付きが良く、ダンパーなどコントロール性に優れた薪ストーブ
- ステンレス製で耐久性が高い
- コンパクト性、熱量、利便性の面からMサイズがおすすめ
- 自分のテントに合わせて煙突レイアウトが組める
- オプション品が豊富
- 本格的な調理にも使える
火付きが良く使いやすいですし、天板を使った調理もできて、オプション品も豊富と、欠点の少ない薪ストーブに仕上がっています。
惜しむらくは、サイドヴューでもあまり窓は大きくないので、炎を鑑賞することについては、他の薪ストーブに一歩譲ります。しかし、燃焼効率やコンパクト性とのトレードオフという面を考えれば、決してマイナスとは言えないでしょう。
サイズに関してはMがおすすめですが、クロンダイクグランデやノルディスクの大型テントなどを使用しているなら、Lの方が良いかもしれません。Lであれば、サイドヴューの窓もそれなりに大きくなりますので、鑑賞用途としても満足できるサイズになります。
最後に注意点を一つ。
テント内で使用する場合には、一度屋外で1時間程焚いてください。
ステンレス製ですので、それほど防錆塗装などはされていませんが、焚き始めは化学物質の匂いがします。
また、サイドのテンマクとウィンナーウェルのコラボロゴは、塗装が黒焦げになり、その後真っ白になります。これは、おそらく耐熱塗料では無く普通の塗料を使っているためと思われます。
以上、テンマクデザインのウッドストーブは、初心者から熟練者まで万人におすすめできる薪ストーブでした。