キャンプに行くと、焚火をしていない人を探すのが難しいぐらい、皆さん焚火を楽しんでいますが、焚火で料理をしている方はまだまだ少ないように思います。
特に、キャンプ場でも売っている広葉樹の薪は、火持ちが良く、煙も少ないので、焚火鑑賞だけでは勿体ないです。
それに、焚火料理は、アウトドアならではの豪快な料理が楽しめるのも魅力です!!
とは言う物の、焚火料理はクッカーが煤だらけになるし、火力調整も難しそうと思っている方も多いと思います。
そこで、今回は、焚火の火力調整の方法から、おすすめのクッカーや焚火ギアまで、焚火料理を楽しむ方法についてまとめてみました。
焚火料理に向いている薪は広葉樹
左が椚、右が楢。いずれも最大径10cmオーバーの大割の薪。 |
焚火料理には、火持ちが良く、煙も少ない広葉樹の薪が向いています。特に、椚(クヌギ)や楢(ナラ)は、薪ストーブなどでも使われるように、火持ちが良く高火力なので焚火料理に適しています。
但し、広葉樹の薪は、火が付き難いため、最初に火力を上げるために針葉樹の薪を併用します。針葉樹の中でも、特に杉は、木質が柔らかく燃えやすいので、火力を一気に上げたい時に重宝します。
一方、松は、松ヤニと呼ばれる油脂分が多いので燃えやすいのですが、煙と煤が多く、匂いもきついため、料理には向いていません。最初の焚き付けとして使うのであれば問題ありませんが、料理の途中で松を足すのは止めた方が良いです。
焚火料理は熾火が基本
焚火と言えば豪快な炎が魅力ですが、メラメラ燃えている状態は、焚火料理には向いていません。
炎が上がっている状態というのは、まだまだ薪が燃えだした途中ですから、煙や煤が多く、温度も一定しません。一見、炎が上がっている方が温度が高く見えますが、炎の熱エネルギーが薪自体の温度を上げるのに使われているため、思ったほど高温にはなっていません。
一方、炎が落ち着いて、薪が炭のようになっている時は、温度は800℃以上に達しており、薪の熱エネルギーを最も効率よく使える状態となっています。
この状態を熾火(おきび)と言い、火力が安定しており、煙も殆ど無いため、料理をするのに最適です。
また、煙が少ないということは、煤も少ないので、クッカーの掃除もラクになります。
熾火の作り方
料理に熾火を使うためには、調理時間にもよりますが、少なくとも直径5cm以上の薪を4~5本は燃やす必要があります。
熾火を多く作るコツは、できるだけ一気に薪を燃やすことです。
薪が燃える熱エネルギーは、最初は薪自体の温度を上げるために使われるため、多めの薪を一気に燃やすことで、効率よく薪全体の温度を上げることができます。
最初に燃えやすく高温になる杉の薪を多めに入れ、一気に火力を上げます。
杉薪が勢いよく燃えだしたら、直径5cm未満の少し細めの広葉樹薪を2~3本加えます。
広葉樹に火が付いたら、太めの広葉樹の薪を2~3本入れ、様子を見ます。
その後、火力が十分であれば更に広葉樹薪を追加し、熾火を作ります。火力が足りないと感じた場合は、杉薪を追加して火力を上げるようにしましょう。
事前に薪を割って準備しておけば、30分程で調理に十分な熾火が出来上がります。
火力は、火との距離で調整
焚火料理では、大量の熾火を使いますが、その熱量は凄まじく、楽にチャーハンができるぐらいの火力があります。
ですから、肉などは、あっという間に焦げてしまいますから、火力調整が必要となります。
ところが、熾火の量は簡単には調整できませんし、熾火の量が少ないと調理時間も短くなってしまいます。
そこで、火力調整は、熾火との距離で行うことになります。
火力が必要な炒め物などは、熾火近くにロストルを置き、その上で調理します。
一方、じっくり焼きたい肉などは、熾火から遠ざけることで火力を落とします。
これは、ポトフやカレーなどの煮込み料理でも重要で、最初は熾火に近い強火で、沸騰したら熾火から離して弱火へと調整すれば、鍋底が焦げ付いたりせず、美味しく出来上がります。
薪を足すタイミング
複数の料理を作っていると、どうしても時間がかかるため、熾火が足りなくなることがあります。
当たり前ですが、熾火は最初が一番火力が高く、燃えるに従って徐々に温度が下がってきますので、太い広葉樹の薪を数本燃やして作っても、1時間もすると火力がかなり下がってきます。そのため、料理によっては途中で適宜薪を追加することになります。
コツは、早めに1本づつ焚火台の端から足すことです。数本を一気に足してしまうと、焚火の温度が急激に下がってしまうため、火力が不安定になります。
基本的には、熾火の火力を維持するためですから、熾火が燃えた分だけ足すイメージです。焚火台の大きさにもよりますが、直径5cm以上の薪を20~30分に1本足すぐらいが丁度良いです。
この辺は、慣れが必要ですので、熾火の火力を一定に保つことを意識しながら、数をこなしてください。
焚火料理向けのクッカー
さて、熾火のテクニックを一通りご紹介したので、焚火料理に向いているクッカーについて解説していきたいと思います。
私の持っている鉄製品の数々。長年のキャンプ生活で、随分と増えてしまった(苦笑)。 |
焚火と相性が良いのは、やっぱり鉄です。アルミは熱伝導率に優れますが、耐熱性が低いため、一般的なアルミクッカーだと焚火の熱で溶けることがあります。特に、熾火の中に突っ込んで長時間調理するダッチオーブンなどは、アルミ製は避けるべきです。
では、各アイテムの特徴と私のおすすめ製品をご紹介していきます。
ダッチオーブン
手前中央から時計回りに、UNIFLAME UF8インチ、同12インチ、Lodgeキャンプオーブン10インチディープ。 |
焚火と言えばやっぱりダッチオーブンです。
ダッチオーブンは、蓄熱性が高く、オーブン料理から煮込み料理まで、様々な料理に使えます。
また、耐久性も高いため、高温の熾火に突っ込んで使うなど、ハードな使い方ができます。
キャンパーなら一度はやってみたい丸取りのローストチキンなど、豪快な料理を楽しむことができるのもダッチオーブンの魅力です。
UNIFLAMEの12インチダッチオーブンに、Lodgeのキャンプオーブン10インチディープを重ねている。足があるので、蓋のハンドルにも干渉せず、重ね置きが可能。 |
ダッチオーブンは、脚が付いている物と無い物がありますが、迷ったら私はあえて脚付きをおすすめします。脚付きのダッチオーブンの最大の特徴は、焚火台に直に置いたり、ダッチオーブンの重ね置きができることです。
この脚があるおかげで、熾火の上でも安定して置くことができ、適当な隙間があるため火が消えてしまうことも無く、火力を維持できます。また、ダッチオーブンを重ね置きすることで、2種類の料理を一気に作ることも可能です。
ダッチオーブンの重ね置きは、トライポットを併用することでも可能ですから、絶対に脚が必要という訳ではありませんが、キャンプらしい豪快な料理を目指すなら、脚付きのダッチオーブンを使いこなしてみてはいかがでしょうか。
焚火台の上に12インチ、その上にトライポッドで8インチを吊るして調理している。 |
欠点としては、脚が邪魔になるのでガス台では使えなくなることですが、キャンプであればゴトクを工夫すればガスバーナーでも使えますので、家庭での併用を考えないのであれば、脚付きをおすすめします。
素材については、鋳鉄製が一般的でおすすめですが、UNIFLAMEの黒皮鉄板製もおすすめです。黒皮鉄板は、酸化被膜に覆われているため、鋳鉄製より錆に強く、丸洗いができるなど、メンテナンス面でラクです。残念ながら、脚付きがありませんが(苦笑)。
尚、ステンレス製は、最もメンテナンスがラクですが、蓄熱性と熱伝導率の点では鉄に劣るため、やはり鉄製をおすすめしたいと思います。
スキレット
スキレットは、ダッチオーブンに並んで焚火料理に向いている調理器具です。蓄熱性が高いので、分厚いステーキもムラなく焼くことができます。
長年使い込んで油が馴染んだスキレット。自分なりの道具に仕立てていくのも、鋳物の楽しみの一つ。 |
焚火は、火力調整が難しいですが、ガスバーナーなどと違って、焚火全体が熱源ですから、熱がまんべんなく当たります。ですから、ガスバーナーのように、真ん中だけ焦げで端の方が火が通っていないなんてことがありません。
蓄熱性が高いスキレットでも、ガスバーナーでは、火力によっては焼きムラが出来てしまいますが、焚火ではその心配が無いので、むしろ焚火料理の方が向いているぐらいです。
左からニトリスキレット15cm、19cm、UNIFLAME10インチ |
おすすめのサイズは、6インチ(約15.2cm)と8インチ(約20cm)サイズです。実は、スキレットは結構重いので、10インチ(約25cm)クラスだと3~4キロあるので、片手で調理するのはかなりしんどいです。
ステーキを焼く場合などは、スキレットをロストルに置いたまま調理すれば良いので、あまり問題にはなりませんが、10インチクラスは重いだけでなく把手も含めて結構かさばりますので、機動力が落ちます。
一方、6インチクラスは、大きなステーキを焼くのには向いていませんが、ソーセージやベーコンを焼いたり、アヒージョを作ったりと、活躍の幅が広いのが特徴です。比較的軽くて機動性も高いので、2枚以上あれば、同時に複数の料理を作ることができるのでおすすめです。
また、8インチサイズであれば、10インチよりは軽く、スーパーなどで売っているステーキもぎりぎり入るサイズですから、キャンプ使いにはこちらの方が向いています。
ニトスキで有名なニトリのスキレットは、15cm(6インチ相当)と19cm(7インチ相当)がリリースされていますので、参考にしてみてください。
左は鋳鉄製のニトスキ、右は黒皮鉄板製のUFスキレット。 |
素材については、ダッチオーブン同様、鋳鉄製か黒皮鉄板製をおすすめします。
フライパン
愛用のCOCOpan。こちらも随分増えてしまった。 |
フライパンは、汎用性が高いので、ある意味スキレット以上に重宝します。
焚火は、思った以上に火力が高いため、鉄製が大前提となります。フッ素加工やダイヤモンドコートなど、ノンスティック加工のアルミフライパンは、耐熱温度が260℃程度ですから、焚火での使用は避けた方が良いです。
最近は、鉄製のフライパンも各種出てきたので悩ましいとこではありますが、性能的には大きな差はありませんので、好みで選んで大丈夫です。turk(ターク)など、高級鍛造フライパンが好まれる傾向にありますが、別にナイフじゃないので鍛造でもプレスでもフライパンとしての性能は変わりません。
それよりも、厚みの方が重要です。鉄は蓄熱性が高いですが、熱伝導率はアルミに劣ります。そのため、ガスバーナーで調理する場合は注意しないと焼きムラができます。
タークは、厚さ2.5mmとかなり肉厚なため、蓄熱性が高く、十分予熱しておけば焼きムラが出にくいのが特徴です。但し、これは重量とのトレードオフになりますので、厚いほど重くなり、機動性の面ではスキレットに近づいてしまいます。
焚火の場合は、熱が全体に伝わるので、焼きムラはあまり気にしなくて良いため、無理して厚手のフライパンを使う必要はありません。
私が愛用しているのはCOCOpanです。把手が取れるので非常にコンパクトで、底の厚さは1.6mm(28cmサイズ以上は2mm)と重量バランスの良いフライパンです。
合計6枚のフライパンをスタッキングしてもこの高さ! |
窒化処理という特殊な加工がされているため、普通の鉄フライパンに比べて焦げ付き難く、耐久性も高いため、メンテナンスも楽です。
窒化処理により、普通の鉄フライパンとは違った独特の鍋肌を持っているCOCOpan。 |
油と煤でドロドロになっても、洗剤を少しつけて金属タワシでガシガシやれば落とせるので、将に焚火料理向けのフライパンです。
把手が取れるというのは、焚火料理ではとても有利に働きます。
焚火は、輻射熱が強いため、どうしても把手が熱くなってしまいますので手袋が必要になりますが、COCOpanは把手が取れるので熱くならずとても便利です。また、焚火台の上に複数のフライパンを置いて調理する場合も、把手が邪魔にならないので、快適に調理ができます。
スタンダードなフライパンの「ベーシック」に加え、3.2mmと極厚の「プレミア」、底が深くて中華鍋風の「炒め」など、豊富なラインアップも魅力です。
ホットサンドメーカー
実は、ホットサンドメーカーも焚火と相性の良い調理器具です。アルミ鋳造製品が多いですが、ホットサンドメーカーを使った料理は、それほど長時間調理しないので、耐久性の面では十分使用可能です。
問題は、多くのホットサンドメーカーは、把手(ハンドル)が短くプラスチック製(フェノール樹脂)の物が多いことです。そのため、焚火台の端に置くなど、ちょっとした工夫が必要となります。
そんなホットサンドメーカーの中で、OIGENはハンドルまで鉄製のため、焚火料理と相性の良いホットサンドメーカーです。
他には、PETROMAXはハンドルが長いので、焚火調理に向いています。
ホットサンドメーカーと言っても、アイデア次第で様々な料理が作れますので、焚火料理でも色々工夫する楽しみがあります。
おすすめの焚火ギア
焚火で料理を作るにあたっては、焚火台以外にも色々とあった方が良いアイテムがあります。トライポッドや焚火ハンガーは、火力調整には欠かせないアイテムですし、ロストルも様々な種類があり、タイプによってメリット・デメリットがあります。
それでは、詳しく解説していきます。
トライポッド
トライポッドは、最もポピュラーな焚火関連アイテムです。
3本の脚を開いて、チェーン等でポットやダッチオーブンなどを吊るすことができ、組み立ても簡単なため、焚火台とセットと考えても良いアイテムです。
構造が単純なため、どのメーカーから出ている物を使っても大差はありませんが、私のおすすめはONOE(尾上製作所)のハンディトライポッドです。ONOEは質実剛健な焚火台で有名なメーカーで、このトライポッドもその名に恥じない造りになっています。
焚火ハンガー
焚火ハンガー(焚火スタンド)は、ここ数年で最もアイテム数が増えたキャンプギアの一つです。特にガレージブランドの伸張が著しく、個性的な製品が数多く出てきています。
焚火ハンガーの最大の利点は、焚火台と組み合わせるにあたって、レイアウトの自由度が高いことです。
私が愛用している焚火ハンガーは、37CAMPのファイヤーラックハンギングです。
アンカーシャフトを地面に打ち込んで、メインシャフトを自立させるタイプなのですが、これだと、焚火台周りにコンパクトにロストルやハンガーをまとめることができるので、同時に複数の料理を行うことが可能です。
ロストルはフライパン、ハンガーはダッチオーブンと、1つの焚火台で複数の料理を同時に作ることが可能。 |
また、スキュワーキットと組み合わせることで、塊肉を焼くこともできますから、焚火料理の幅が一気に広がります。
スキュワーで巨大な塊肉を焼くも良し、2種類の肉を同時に焼いて味のバリエーションを楽しむも良し。 |
焼き上がった塊肉を、ナイフで豪快に切って食べることができるのも、焚火料理の醍醐味。 |
付属の収納袋やアンカーシャフトの構造など、細かい点では不満もありますが、応用の幅が広いので、私にとっては焚火料理を楽しむ時の必須アイテムになっています。
焚火ハンガー・焚火スタンドは、37CAMP以外にもONOEやベルモントなど、様々なメーカーから発売されていますので、自分に合った一台を見つける楽しみがあります。
※37CAMPのファイヤーラックハンギングとBBQスキュワーについてはこちら
ロストル
ロストルは、焚火で調理をする場合は、基本のアイテムとなります。多くの焚火台には、専用のロストルが用意されていますが、自分なりの組み合わせを考えるのもアリです。
私は、ONOEのフォールディングファイアグリルを愛用していますが、これにUNIFLAMEのファイアグリル専用のロストルを合わせて使っています。
このロストルはステンレス製で、ONOEの焚火台に丁度合うサイズなので、とても重宝しています。熾火を大量に作っておいて、このロストルを乗せれば、広いコンロが完成しますので、複数のフライパンを同時に使うことも可能です。
5インチのスキレットなら3枚置けるぐらい広いコンロになる。 |
難点は、薪を足すためには、上の物を除けて、ロストルをずらす必要があることです。
その点、焚火ハンガーのロストルであれば、簡単に移動できますし、隙間から薪を足すこともできるので、長時間の調理にはこちらの方が向いています。
また、全面を覆うのではなく、一部に橋渡しするような形のロストルを使えば、薪の追加も簡単ですから、焚火スタイルと合わせて工夫することがポイントになります。
焚火テーブル
実は、焚火料理で一番重要なのは、焚火テーブルです。
焚火を囲んで食事を楽しめるだけでなく、出来上がったダッチオーブンを置くなど、テーブルが無くては始まりません。
焚火テーブルは、木製の物などもありますが、私は断然鉄製をおすすめします。火の粉が飛ぶという理由もありますが、直火でガンガンに熱したダッチオーブンやスキレットなどは、木の上に置くと一発で丸焦げになります(苦笑)。
鉄製のテーブルであれば、気にせずアツアツのスキレットなどを直接置けますから、調理中にちょっと火力を調整したい時や、薪を追加したい時など、一度火から調理器具を下ろす場所としても重宝します。
私は、長年キャンパーズコレクションのタフライトファイアープレイステーブルを使っています。剛性と重量バランスが良く、とても使いやすいテーブルです。
他には、ONOEのマルチファイアーテーブルも良い製品です。4本で9kgと重いのが玉に傷ですが、アイアンレッグLOW・HIGHと組み合わせることでマルチラックとしても使えるなど、オプション品が豊富なのも魅力です。
焚火料理のまとめ
以上、熾火を使った料理について、熾火作りなどの基本から、ハンガーラック等を利用した応用まで、一通りご紹介させて頂きました。
【まとめ】
- 薪は広葉樹がベスト。杉は火力の足しに、松は避けること。
- 焚火で料理するためには、最初に熾火を作ろう
- 火力は、ハンガーラックやトライポッドを使って、熾火からの距離で調整
- ダッチオーブンはあえて脚付きに挑戦しよう!
- 焚火テーブルは鉄製がおすすめ
焚火料理は、とても奥が深いので、まだまだ紹介しきれていないことは沢山ありますが、自分なりのスタイルを創り上げていく楽しみがありますので、是非とも創意工夫してみてください。