カーボンニュートラル。
今日は、少しかたいお話になりますが、アウトドア好きの方には知っておいてほしいと思うので、少しお付き合いいただければ幸いです。
カーボンニュートラルとは
2020年10月に就任した菅総理は、所信表明演説で「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」と宣言したことで、にわかに注目されるようになりました。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスとして特に影響の大きい二酸化炭素(CO2)の排出をプラスマイナスゼロにするということです。
CO2による地球温暖化については、未だに懐疑派・否定派がいますが、今年の8月9日に国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)から発表された第6次報告書では、「人間の影響が、大気、海洋、及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地が無い」と明記されました。更に、2100年までの気候変動予測では、今後数十年間でCO2を大幅削減できなければ、産業革命前に比べ気温上昇が2℃を超えるとされています。
この、たった2℃の上昇がもたらすことについては、北極海の氷が夏に全て溶ける(10年に1回)、極端な熱波の発生率が14倍、極端な大雨が1.7倍、干ばつ被害が2.4倍(いずれも産業革命前との比較)と予測されています。日本でも近年災害級の大雨が増加していることは、以前記事にしましたが、これらが地球温暖化の影響によるというのは、最早疑う余地はありません。
そこで、CO2の排出量を削減し、年間で排出するCO2をこれ以上増やさないようにする取り組みがカーボンニュートラルです。
日本のエネルギー基本計画
カーボンニュートラルを考える上で、最もCO2の排出量が多いのは、石油・石炭・天然ガスを燃料とする火力発電であり、これらのエネルギー転換は、避けては通れない道となっています。今年7月に発表された国の「エネルギー基本計画」によると、2030年の電源構成として、再生エネルギー(再エネ)の電源構成を36~38%とし、再エネの主力電源化を徹底するとしています。また、化石燃料による火力発電は41%、原子力が20%から22%となっています。2019年度現在の電源構成は、再エネ18%、化石燃料76%、原子力6%となっており、再エネを10年で倍増する計画となっています。一方、原子力が現状の3~4倍に増強することになっていますが、福島第一原発の問題をおきざりにしている感は否めず、賛否両論となっています。化石燃料についても、減らすと言っても41%と未だ高い割合となるため、EU諸国に比べるとまだまだ改善すべき数値と言えます。
再生可能エネルギーの課題
北海道宗谷岬のウィンドファーム |
さて、カーボンニュートラルを目指すにあたって注目される再エネですが、多くの識者が指摘する通り、問題は山積しています。再エネの内訳は、太陽光15%、水力10%、風力6%、バイオマス5%、地熱1%となっており、太陽光が主力になっています。
太陽光は、FIT(固定価格買取制度)という、他の電源より高い固定価格で買取ることで、発電事業者を補助する仕組みによって普及が図られてきました。FITは、再エネで先行するドイツで採用された制度で、普及の初期段階においては決して悪い制度ではありませんが、メガソーラー発電事業者の認可に問題があり、特に山間部の環境破壊・土砂災害につながったことは大きな問題です。また、景観に関しても大きな問題となっており、日本最大の湿原で丹頂鶴の繁殖地にもなっている釧路湿原でも、一部地域にメガソーラーが設置されており、景観を大きく損ねています。行った方なら分かると思いますが、一面に広がる湿原の緑の中、忽然とソーラパネルが広がるのは、人間の業を感じずにはいれません。
風力についても、太陽光と同じくFITが設定されていますが、風車が発生する風切り音(低周波)問題があり、北海道や太平洋沿岸の一部地域を除いてあまり普及していません。
また、日本列島は、偏西風の影響を強く受けるため、日本海側は通年で一定の風が吹いています。ところが、日本海側は、北アルプスから谷川連峰と急峻な山が連なっているため、風力発電の適地が非常に少ないのです。山頂に直径100mの巨大風車を建設するのは並大抵ではなく、コストも非常にかかります。一方で、太平洋岸は市街地が多く、先述の風切り音問題があるため、適地が少ないのが実情です。
そうなると、海上風力が一番有望なのですが、これもなかなか進まないのが実情です。最大の課題は、漁業権との折り合いを付けるのに時間がかかることです。日本は言わずと知れた島国で、周りを海に囲まれているため、ほぼ全域に渡って漁業権が設定されています。海上に多量の風車を建設すると、巻き網漁などの一部の漁法が大きな影響を受けるため、漁業権を持つ漁協との利害調整が難航するケースが多いのです。
バイオマス発電はカーボンフリーというウソ
実は、私が一番問題視しているのがバイオマスです。バイオマスは、動植物由来のエネルギーの総称です。家畜のフンや生ごみから生成するメタンガスや、間伐材などから製造されるウッドチップ(木材チップ)などがこれに当たります。バイオマスの中でも、大多数を占めるのがウッドチップを燃料に使う木質バイオマス発電です。何故ウッドチップがカーボンニュートラルになるのかと言うと、木は大気中のCO2を吸収して成長するため、木材由来のウッドチップを燃やしてもCO2が循環するだけで増えないというのがその理由です。一見、サスティナブル(持続可能性)なように見えますが、実は、森林資源の成長メカニズムを十分考慮しているとは言い難いのが実情です。
確かに、木は成長過程でCO2を吸収し、セルロースとして繊維中にカーボンを固定します。そのカーボンを燃焼させるのであれば、再び大気中にカーボンが移動するだけなので、これだけ見ればカーボンフリー(CO2の排出量がプラスマイナスゼロ)です。しかし、木と言えど生物ですから、呼吸はしています。木は、光合成によってCO2とH2O(水)からO2(酸素)と糖(炭水化物)を生成しますが、一方で細胞が生きていくためには動物と同様、O2を吸収してCO2を出します。ですから、木が成長する過程において排出されるCO2を考慮すると、完全なカーボンフリーにはならないのです。また、成熟した木は、光合成によって消費するCO2より、代謝で放出するCO2の方が多くなる場合もあります。更に、木材をチップにするためには、伐採・運搬・加工が必要で、少なからずCO2が排出され、結果カーボン量は使用前より増加するのです。
また、発電のエネルギー源とするためには、まとまった木材量の確保が必要となりますが、実際には間伐材などの未利用木質だけで賄うのは非常に困難で、結果として建材等に利用可能な一般木材も使用することになります。その結果、有用な森林資源まで伐採し、木材チップとして使用することになり、木質バイオマス発電推進地域の森林組合あたりの伐採量が、8年間で間伐が1.58倍、主伐が2.86倍にも上っています。
総務省 木質バイオマス発電をめぐる木材の需給状況に関する実態調査 結果報告書 |
これが、森林資源にどれだけの影響を与えるかを計算してみると※、バイオマス発電所1基の年間発電量が平均43,746kwで、必要となる木材チップが262,476トンとなり、森林面積にしておよそ3850ha、東京ドーム823個分もの面積が必要となるのです。
つまり、原発の20分の1程度の発電容量のバイオマス発電所1基で、毎年東京ドーム823個分もの森林資源が必要となるのです。どう考えても、主要電源として利用するには無理があります。現に、一部の地域では、木質バイオ発電のために皆伐(一定区域の木を全部伐採すること)が行われており、土砂崩れなどの危険性が増しています。
EUでは、カーボンフリー発電として木材を使用する際、伐採した後には植林を義務付ける方向で調整が進んでいますが、木が成長するためには最低でも20~40年は必要となりますから、その程度では発電のための伐採サイクルに追いつかないことは明白です。
話はこれだけでは終わりません。バイオマス発電は、総務省や経済産業省などが中心となって進めてきたのですが、日本の森林資源は、山岳地域が多いため伐採にコストがかかります。当初は、林野庁も協力して、森林資源の有効活用を謳っていたのですが、コストと需要の両面から、木材チップを輸入に切り替えたり、パーム油を燃料に使うバイオマス発電が増加しています。これでは、環境コストを国外に押し付けることになり、輸送時のCO2も増加、正に本末転倒と言う次第です。
※計算根拠
バイオマス発電では、1kw発電するのに約6トンの木材が必要
日本木質バイオマスエネルギー協会 燃料材需給動向調査報告書 2020年度 より筆者独自計算
https://www.jwba.or.jp/activity/fuelwood-demand-survey/
伐採量1haあたり150立米(林野庁の目標数値によると202立米/haだが、一般的な森林資源容量を採用)、木材チップ絶乾重量1トンあたり2.2立米で換算
http://zmchip.com/249chipkansan.pdf
https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/toukei/attach/pdf/youran_mokuzi2020-9.pdf
世界で進む再生可能エネルギー
ここで少し、世界に目を向けて見ましょう。
世界の再生可能エネルギーの年間発電量を比較してみると、1位は中国がダントツで7.67EJ、2位が米国の4.90、3位ドイツ(2.06)、4位インド(1.34)、5位イギリス(1.14)、6位日本(1.12)となっています。
中国の7.67EJは、同国の原発による発電量3.25EJをはるかに凌駕値で、内訳としては風力発電の割合が大きく5割強を占めています。
※EJ:エクサジュール。東日本大震災に放出されたエネルギー総量は2.0EJとされている。
参考文献:注目集まる再生可能エネルギー、日本の実力を世界規模で確認
中国は世界1のCO2排出国と言われており、とりわけ石炭火力の割合が高い国ですが、ここ数年で急速にエネルギー転換が進行しており、2060年にはカーボンニュートラルを実現するとしています。
再生可能エネルギーでよく議論になる太陽光パネルですが、中国は、2020年の出荷量では世界市場の67%を占めており、圧倒的な強さを誇っています。
風力に関しては、オランダを始めとするEU企業が生産量・特許共に世界シェアを押さえている状況ですが、再エネ世界1位の中国が風力発電を世界的に輸出する日は近いでしょうから、風力でも中国が躍進する可能性は十分にあります。
一方のアメリカですが、パリ協定にあれだけ否定的だったトランプが大統領だったにも係わらず、着実に再エネを増加させています。中国ほどではありませんが、日本の4倍以上の発電量を誇っているのですから、発電規模からするとやはり大きいと言わざるを得ません。
ドイツは、福島第一原発の事故を鑑みて、メルケル首相が脱原発を宣言、再エネを加速させていますが、ここ数年は停滞気味です。特にメガソーラーは、太陽光パネルによる景観の問題が顕在化しつつあり、これ以上増やし難い状況になっています。風力も景観問題があり、更には海岸が比較的少ない地理的要因により海上風力の普及にも課題があります。
ちなみに、フランスは原発大国で、80%近くを原発に頼っているため、良くも悪くもCO2排出量が少ない国となっています。
日本で再エネが進まないワケ
さて、日本は今後どのようにしていくべきなのでしょうか。再エネ懐疑派は、太陽光を進めれば中国にエネルギー政策を握られると言い、風力は台風が毎年来る日本では無理だと言います。
確かに、日本の太陽電池技術は、2000年代初頭までは世界のトップを走っていましたが、その後、中国に抜かれてしまいました。風力も、様々な理由で普及が難航しています。このようになかなか進まない再エネですが、その一因は、日本の原子力政策にあります。国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の初会合で、京都議定書が採択された頃は、日本がイニシアチブを握っていました。その後、回を重ねるごとにCO2排出削減が厳しくなっていきましたが、日本政府はそれを原子力でカバーしようとしていました。これは、COP15の民主党鳩山政権時代まで続いていたのですが、その後、2011年に東日本大震災が起こることで状況は一変、一気に脱原発へ世論が傾いたのです。脱原発で再エネを中心とするか、原発をベースロード電源として再エネを活用するか、議論は激しく対立。これによって、日本のエネルギー政策は大きな転換を迫られたのですが、民主党政権を引き継いだ自民党も、表立った原発から再エネへの切り替えには進まず、問題を先送りにするだけで、これといった手を打ってきませんでした。
ちょっと政治的な話に突っ込むと、原子力は、経産省を中心とする国策として導入されてきました。アカデミズムの世界では、日本原子力研究開発機構や電力中央研究所が中心となり原発の研究開発を進め、電力会社が経産省の監督下において建設・普及を担当しました。そして、それに係わる費用は電源三法(電源開発促進税法、特別会計に関する法律、発電用施設周辺地域整備法)により賄われ、総括原価方式によって電気代に混ぜ込まれて、消費者が支払われています。原発再稼働の話になると、再三出てくる地元への補助金、その費用は全国民が電気代として支払わされているのです。原発推進派は、再エネはFITのような補助金無しでは不可能と言いますが、これは電源三法を棚に上げた議論に過ぎません。
そんな原発が、3.11以来再稼働もままならない状況となって10年。現実的には、日本の学生で原子力関連を志望する人数が激減、技術者の数は圧倒的に減りました。ですから、日本は既に、放っておいても原発を維持する力は最早失われたと私は思っています。ところが、それを認めると不都合な人や組織が多いため、公には認められない状態が続いているのです。自民党内にも、原発再稼働や推進が民意として不可能なことを悟っている人は多く、そのような議員と政府役人との間で激しい鍔迫り合いが行われています(河野太郎大臣パワハラ音声)。
さて、原発もダメ、化石燃料もダメとなれば、結局再エネに頼らざるを得ないと言うのが論理的帰結と言えるでしょう。このまま化石燃料を継続するなどと国際会議の場で言えるはずもなく、再エネを技術と経済の両面で主軸として研究・発展させていくことが急務と言えます。さもなければ、日本の7倍以上の電力を再エネで得ている中国に更においていかれることになり、産業構造的にも日本が先進国から落伍していくことになりかねません(というか最早様々な場面で落伍していますが、それはまたの機会に)。
再エネ課題への対処方法
先にも述べた通り、再エネには様々な課題があります。一番の課題は、太陽光と風力は、自然任せだと言う点です。これは、再エネ懐疑派の拠り所となっている訳ですが、実は、これはAIによる気象予報技術により回避可能です。現在の天気予測は、高い精度を誇っており、更にAIによる予測の精度向上を図ることで、日照時間や風力を高精度に予測することが可能となります。一方で、電力需要も高精度で予測されていますので、その需給バランスをうまく保つようにコントロールすることは技術的には十分可能です。また、太陽光は夜は使えないと言いますが、元々夜は電力使用量が下がりますから、真夏の昼間のピーク電力に合わせて、太陽光と風力のバランスを取れば、ベースロード電源としての使用は十分可能です。
一方、長期間の雨などで十分な電力が確保できなくなる場合の対処としては、再エネの余剰電力を何らかの形で蓄積しておく必要があります。これに関しては、2つの方法が考えられます。一つは、大型の蓄電設備を設ける方法で、EV最大手のテスラが日本初の大規模蓄電施設を北海道の千歳に建設することが発表されています。
もう一つは、余剰電力を使って、海水を電気分解し、水素として蓄積し、電力の逼迫度合いに応じて水素火力発電で賄うという方法です。現時点ではまだ研究段階ですが、イギリスを中心にEUでは、十分な余剰電力が発生する程度まで再エネを普及させ、水素備蓄を行うシステムづくりを進めています。
再エネを促進するために
さて、再エネのカギとなるのは、太陽光と風力ですから、普及が最大の課題となりますが、これに関しても、実は日本でも取り組みが始まっています。太陽光については、PPA(Power Purchase Agreement(電力販売契約))モデルという制度があります。簡単に言えば、屋根貸しで、自分の家の屋根を電力事業者に貸して、発電した電力の一部を電力事業者から安価に購入するという仕組みです。太陽光パネルは、電力事業者の資産となるため、設置・メンテナンス費用がかからず、初期費用が抑えられるのが大きなメリットとなります。PPAは、基本的には事業者向けの制度ですが、これを一般家庭向けに応用すれば、多くの家庭の屋根が太陽光発電の適地となります。日本の国土の7割は山岳地帯ですから、太陽光パネルを設置できる適地は限られています。当たり前ですが、山間部を切り開いてメガソーラを設置するなど、環境破壊と景観破壊と災害リスクの3重苦ですから絶対ダメです。
これに伴って、もう一つ重要なことが、電気の地産地消です。現在の電気は、遠く離れた発電所から送電線で送られていますが、長距離の伝送のため少なからずロスが発生します。また、昇圧・降圧のための変電設備など、インフラ投資も必要となり、それらが全てコストとなります。そこで登場するのが、スマートグリッドと言われるシステムです。詳細は省きますが、電力の流れを供給側・需要側の両方から制御し、最適化できる送電網のことで、街の様々な場所で小容量・多数の発電を行い、それを工場やEV、家庭など街全体で消費するイメージです。
残念ながら、日本は、送電網が世界トップレベルで整備されているため(だから停電が世界一少ないのですが)、スマートグリッドについては一向に議論が進んでいません。2020年にやっと発送電分離(発電事業者と送電事業者を分けることで、電力自由化を促進する)が実施されましたが、蓋を開けてみれば、従来の電力会社が子会社を作って送電事業を分離したに過ぎず、看板を掛け替えただけの状態となっています。
さて、もう一方の風力ですが、こちらは太陽光以上に問題が山積しています。既に述べた通り、陸上風力は適地が無く、これ以上の大幅な増加は見込めません。頼みの綱の洋上風力も、漁業権の問題があります。ただ、各自治体では、少しづつではありますが進展が見られます。
新潟市の取り組みでは、自治体と漁協、電力事業者の3者で実証実験ベースで少しづつ風力発電が行われており、理解が進んでいます。漁業産業は、一部を除いて収入が安定せず、平均年収ベースでも1次産業の中では低いのが実情です。そのため、慢性的な後継者不足に陥っており、多くの地域では漁業権どころではなくなりつつあります。風力発電は、発電機のメンテナンスなどの恒常的な雇用が発生しますので、そういった漁業産業の受け皿になる可能性があります。また、風力発電設備周辺は、高波対策なども行われるでしょうから、それらが新たな漁礁になる可能性もあります。そういう意味でも、自治体・漁協・電力事業者の3者が一体となった改革が行われることに期待したいところです。
尚、風力発電反対派は、台風を問題視していますが、これは技術革新でどうとでもなります。風力発電の風車の羽根は、飛行機と同様の流体力学によって作動しています。飛行機の羽根は、上面と下面で空気の流速が異なることで発生する揚力によって飛んでいます。同じように、風力発電の羽根も揚力によって回転しているので、単純に言えば、この揚力が発生しない形態にブレードを可変できれば、台風の影響を最小限に抑えることができます。
また、台風でも発電可能な「垂直軸型マグナス式風力発電機」も日本のベンチャーが開発に成功していますので、台風が克服できるのは時間の問題です。
3.11以降の失われた10年のうちに、世界は脱炭素に大きく舵を切ってきました。次の10年を、失われた20年にしない為にも、日本も待ったなしで再生エネルギーに投資していく必要があると、私は考えています。
未来の発電について考える
最後に、チョッとくだけた話題を。
ここまで再エネについて色々考えてきましたが、実は世界中の全ての電力エネルギーを賄う方法があります。SF好きの方はご存じかもしれませんが、静止衛星軌道上の太陽光発電と起動エレベーターです。
太陽光発電は、大気の影響があるため雲などに邪魔をされますが、大気の影響を受けない宇宙空間であれば、発電効率は地上の10倍とも言われ、高効率で安定的な発電を行うことが可能です。
発電した電気は、マイクロ波に変換され、地上では巨大なパラボラアンテナで受信し、再び電力に変換します。
この技術は、NASAやJAXAでも研究が進んでいますが、最大の課題は、どうやってそれだけの設備を衛星軌道上に打ち上げるかということになります。ロケットで打ち上げた場合、火力発電所並みの発電所を建設する費用に1.3兆円もかかるという試算が出ています。
まあ、膨大な太陽電池をロケットでちまちま打ち上げていては、とても世界の電力を賄うことは不可能です。そこで登場するのが、軌道エレベーター(宇宙エレベーター)です。軌道エレベーターとは、赤道上に静止衛星を打ち上げ、そこから地上にケーブルを下ろし、反対側(宇宙側)にもケーブルを伸ばしてカウンターおもりを付けることで、地上と宇宙をケーブルでつなぐ技術のことです。ケーブルさえ繋いでしまえば、あとはそれを伝って物を運ぶことができるので、ロケットより安価に物を宇宙へ送ることが可能となります。
問題は、長大なケーブルの素材で、とにかく軽くて強靭なことが求められます。この分野に関しては、カーボンナノチューブという技術が最も有力視されており、日本でも研究開発が進んでいます。
この夢のような静止衛星軌道上の太陽光発電所。現時点では、まだいつ頃実現できるかは定かではありませんが、今世紀中には実現してもらいたいものです。
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