OPTIMUS(オプティマス) 8Rの修理とメンテナンス

2021年7月15日

DIY キャンプ沼 バーナー

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本格的な梅雨に突入して以来、ずっと雨続きでキャンプにも行けず、悶々とした週末を送っている私。あまりにも手持無沙汰なので、逆にまとまった時間のあるこんな時しか出来ないことをしようと思い、実家からサルベージしてきたバーナーを修理することにしました。



先週は、ホエーブスを修理したので、今週はOPTIMUS 8Rを修理します。


OPTIMUS 8Rについて

OPTIMUS(オプティマス)は、スウェーデンで1899年に誕生したポータブル(携行)ストーブメーカーです。最盛期には、ストーブだけでなく、加圧式ランタンも製造しており、ヨーロッパを中心に多くの製品を提供していました。

8Rは、そんなオプティマスの歴史の中でも、特に愛好者が多いストーブと言えるでしょう。理由は、箱型で携帯性に優れているからです。約13cm四方の角型で、高さも8cm程とコンパクトなため、登山からツーリングまで、様々なアウトドアの場面で使われてきました。そんな8Rですが、利便性の高いガスストーブや、MSRに代表されるバーナーとタンクが分離された最新モデルには勝てず、2005年に往年のファンから惜しまれつつも製造が終了しました※。


※一説には、外箱の青い塗料が、環境面で問題になったためとも言われているが、詳細は不明。


私の所有している8Rは、前回のホエーブス同様、父が学生時代に購入した物ですから、今から50年以上前の代物です。私が子供の頃、父はホエーブスをよく使っていましたが、8Rは使っていた記憶が殆ど無く、私も母から8Rの存在を知らされるまで忘れていたぐらいです。

父に聞くと、8Rはホエーブスに比べれば火力が低く、風にも弱いため、ホエーブスを好んで使っていたそうです。私が、8Rの思い出が少ないのも頷けます。


8Rを修理する

さて、私の手元にある8Rは、元箱も残っており、外観はかなり綺麗な部類に入ると思われます。



擦れが少ないことからも、父があまり使っていなかったことが伺えます。



中は、流石に使用感があり、色々と汚れも目立ちます。



問題は、バルブ周りです。持ち帰った時に確認済みですが、ハンドルが回らず、グラファイトパッキン周りの劣化が予想されます。


8Rの分解・清掃

さて、では分解していきます

先ずは、ゴトクを外し、本体を取り外していきます。



耐熱シールドは、タンクの溝にハマっているだけなので、左右に引っ張って外します。

タンクと外側の箱も、同様に溝にハマっている構造ですので、力づくで引っ張れば外れます。


バーナー本体から、バーナーヘッドとプレヒート皿を取り外し、バルブ周りの調整にかかります。



とりあえず、バルブ部のネジを回してみたところ、予想外に簡単に回りました。取り外して中を確認してみると、特に汚れや痛みは無さそうだったので、再度ネジを取り付けて締め付け具合を調整。


バルブハンドルは工具も兼ねている。


その後、バルブハンドルを回してみると、問題無く回りました。



ニップルからクリーンニードルも出ているので、とりあえずこのまま様子を見ることに。



次に、タンク内に残ったホワイトガソリンを抜いてみたところ、若干濁っていました。




とりあえず、ハクキンカイロ用ベンジン(親父曰く高級なホワイトガソリン)を注ぎ、点火試験を行います。



プレヒートして・・・



点火!



無事、点火はしましたが、何だか火力が弱い気がします。

やっぱりウィックを交換しないとダメそうです。


タンクとバーナーを外す

8Rは、ポンピング不要のガソリンバーナーですが、それを実現しているのがウィックと呼ばれる、燃料を吸い上げる「芯」です。


タンクの中に白く見えるのがウィック。


燃料は、ウィックの毛細管現象によってタンク内からバーナーの方に吸い上げられ、バーナーの熱で燃料が気化し、燃焼します。そのため、ウィックの吸いが悪いと、火力が上がりません。


このウィックを交換するためには、タンクからバーナーを外す必要があるのですが、私の8Rは、これがタイヘンでした。

とりあえず、ペンチでやってみたのですがビクともせず、モンキーレンチでもダメで、ネジを舐めて軽く潰してしまう始末。

詳細に観察してみると、バーナー付け根のタンク部分にかなりゴミのような物が溜まっており、錆びているように見えます。



いくら真鍮とは言え、錆びる時には錆びるので、最悪、錆ついて固着してしまっていることも考えられます。バーナー本体は、L字型に曲がっているので、L字部分を持って強引に回せば外せる可能性はありますが、本体が曲がったり折れたりしたら再起不能ですから、そんなリスクは犯せません。


そこで、つけ根の部分を、タンク側を中心にガストーチで炙ってみることに。タンク側が熱膨張することでネジの穴が広がれば回せると考えた訳です。

この時、タンク内のホワイトガソリンは、念入りに抜き取っておきました。



慎重に、数度に渡って加熱を繰り返した結果、無事に外すことができました。

(;´Д`)ハア




ウィックの方は、バーナー本体を抜いている途中にちぎれてしまいました。

どうやら、経年劣化でかなりフケていたようです。


ニップルとクリーンニードルの清掃

ここで、ニップル周りも清掃しておきます。

ニップルを外すと、クリーンニードルが見え、バルブハンドルを回すと上にあがってきて、取り外すことができます。




ウィックを抜いてしまえば、タンク側付け根のヴァポライザー部からニップルまで、完全にフリー状態になりますので、ブラシ等を使って入念に掃除します。



ニップルは、かなり煤が固着していたので、耐水サンドペーパーで落としました。

クリーンニードルは、エレベーターギアが少し汚れていたので、歯ブラシで落としました。



バーナーヘッドは、ベンジンで煤をふき取る程度にしておきました。

プレヒート皿は、アルコールジェルの燃えカスがかなり溜まっていたので、金属タワシでゴシゴシ。



バーナー本体も煤で黒くなっていたので、金属タワシで磨き、ベンジンで汚れを拭き取ります。


一方、タンクの方ですが、こちらはなるだけピカピカにしたいと思い、ピカールで磨くことに。


左半分を磨いたところ。


この手の真鍮製品は、ピカールで磨くと新品の輝きを取り戻すことができます。



問題になったバーナーとタンクの結合部分も、頑固な汚れはマイナスドライバーでこそげ落とし、綺麗に磨いておきました。



新品とまではいきませんが、これぐらい綺麗になれば満足です。


ウィックの自作

では、ウィックの交換作業に入ります。8Rのウィックは、今でもネットで売っていますが、要するに綿糸を撚っているだけですので、簡単に自作することができます。


用意したのは、たこ糸と真鍮製の針金。どちらも、ホームセンターで購入可能です。



先ずは、たこ糸を、ウィックの長さぐらいの厚紙に巻き付けて輪を作ります。それを、針金で留めて、留めた針金を撚ります。



あとは、輪の下の部分をハサミで切ればウィックの完成です。



出来たウィックを、バーナー本体のヴァポライザー部に挿入します。この時、入り難いようであれば、たこ糸を数本抜きます。私が作った時は、4~5本抜きました。



あとは、ウィックの反対側をタンクにドライバー等を使いながら押し込みます。



最後に、バーナー本体をタンクにねじ込んで終了。

この時、L字のバーナー本体が、なるだけタンクと水平になるようにねじ込みます。



あとは、各パーツを組み付けて、外側の箱の中に戻せば修理完了。



試運転

さて、試運転です。

燃料は、親父から貰ったハクキンカイロ用ベンジン。


液体アルコールを、注射器でプレヒート皿に入れて、プレヒート。



十分に暖まったところで、バルブオープン、点火!



いい音(うるさい音)してます。

バルブ部分からの燃料漏れも無く、火力もしっかりと出ているようです。


試運転を兼ねて、コーヒーを淹れることに。



コーヒー2杯分のお湯を沸かすのに、3分程かかりました。確かに、ホエーブスに比べれば火力は劣りますが、これはこれで楽しめます。


修理開始から、およそ4時間。

ホエーブスよりはラクでしたが、それなりに時間がかかりました。


エピローグ

先日、8Rを修理して使えるようにしたことを父に伝えると、私が子供の頃、家族で奈良県の大和三山を巡るイベントに参加した時の話をしていました。お昼は、みんなお弁当だったのですが、チキンラーメンが好きな父は、8Rで湯を沸かして作ろうとしたらしいのです。当日は、池に氷が張るぐらい寒く、風も強かったため、中々湯が沸かず苦労したと言っていました。


それを聞いていて、私はあることを思い出しました。

気が短い父は、8Rをプレヒートするのに、プレヒート皿だけでは飽き足らず、バーナーのつけ根部分の窪みにも、アルコールジェルを入れてプレヒートしていたことを・・・。


分解に苦労したのは親父のせいか!!



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