最近は、キャンプと言えば焚き火というぐらい、メジャーなアクティビティになった焚き火。でも、焚き火(焚火)は、意外と火起こし(火熾し)が難しいという声をよく聞きます。
私が子供の頃、大阪市内でも冬の公園では、ドラム缶などで焚火が行われていましたので、昭和生まれの私にとって焚火はとても身近な存在でした。そんな環境で育った私ですから、日常的とまでは言わないまでも、自分でも焚火をしていましたので、火起こしのスキルは必須でした(笑)。そんな情景も、80年代半ば過ぎには見られなくなりましたので、平成生まれの方で、特に都市部出身の方には、焚火は縁遠い物になってしまったことでしょう。
今回は、焚火をしたことが無いという超初心者の方でも、絶対に失敗しない火起こしの方法について、丁寧に解説したいと思います。
一言で火起こしと言っても、使う道具と焚き付けの種類によって、難易度が変わります。ですから、難易度順にレベル0から5まで、順を追って解説していきます。
いずれの難易度でも、薪は、入手が容易で着火も簡単な、針葉樹(杉)の薪を使います。杉であれば、ホームセンターのアウトドアコーナーでも販売していますので、事前に購入しておくことをおすすめします。キャンプ場によっては、針葉樹薪が無かったり、薪が十分に乾燥されていなかったりしますので、予め用意しておく方が、より失敗なく火起こしができます。
もう一つ共通するポイントが、空気を送ることです。薪は空気(酸素)が無ければ燃えませんので、炎が安定するまでは、空気を送り込む必要があります。上級者は火吹き棒を使いますが、うちわか、無ければ30cm四方程度の厚手の段ボールがあればOKです。火吹き棒は、吹き過ぎると頭が痛くなるので、私はあまり好きではありません(苦笑)。
レベル0 絶対に失敗しない火起こし!
焚き付け:割り箸
道具:ガストーチ
火起こしで最も難しいのが、木材に火を点けることです。たとえ割り箸でも、マッチ1本で火を点けるのは至難の業です。でも、ガストーチを使えば、簡単に火を起こすことができます。ただ、高火力なガストーチを使っても、いきなり薪に火を点けるのは難しいです。不可能ではありませんが、相当時間がかかります。
そこで、割り箸を焚き付けとして使います。やり方は簡単、100円ショップで売っている最も安い割り箸を20~30本ほど使って一気に高火力にして薪に火を点けます。
写真のように、空気が通りやすいように、なるだけバラバラに割り箸を入れ、その上に、薪を2~3本置きます。
あとは、ガストーチで一気に割り箸に火を点けるだけです。
割り箸全体に火が回ったら、火の勢いを見ながら、うちわであおいで空気を送り込みます。
ガストーチは、ドン・キホーテやホームセンター等で売っています。
購入に当たっては、CB缶(カセットボンベ)が使える物を選ぶと良いです。CB缶はコンビニ等でも売っているため、入手が容易です。ねじ込み式の専用タイプは、ホームセンターやアウトドアショップなど、購入先が限られますし、価格も高いです。
レベル1 道具はライターだけ!
焚き付け:紙、割り箸
道具:ライター
レベル0は、ガストーチを使いましたが、レベル1ではライターを使います。ライターは、ガストーチに比べて火力が劣るので、焚き付けに紙を使います。
紙に火を点け、その熱で割り箸を燃やし、更に薪を燃やしていきます。紙は、新聞紙がベストですが、無ければコピー用紙や、段ボールを手で割いた物でもOKです。段ボールを使う場合は、できるだけ火が点きやすいように、切り口がガタガタになるように手でちぎります。
先ず、紙を軽く丸めた物を2~3個作ります。新聞紙であれば、1枚(見開き)を4分の1に切って、軽く丸めます。固く丸めたり、ねじってしまうと、燃えにくくなるので、なるだけ空気を含ませるようにふわっと丸めるのがコツです。
その上に、割り箸を20~30本置きます。
更にその上に、薪を2~3本置きます。
ライターで紙に火を点ける時は、3か所ぐらいに火を点け、一気に火が回るようにします。
レベル2 これが昭和の火起こしだ!
焚き付け:新聞紙
道具:ライター
私が子供の頃から慣れ親しんだ方法です。昔は、焚き付けと言えば新聞紙でしたが、最近は新聞をとらなくなったので、ある意味入手困難になってきています(苦笑)。新聞紙が無い場合は、チラシや包装紙、コピー用紙などでも代用可能ですが、燃えやすさは新聞紙に劣りますので、多少多めに必要となると思ってください。
先ず、レベル1同様、新聞紙を軽く丸めた物を2~3個作ります。
次に、新聞紙をねじった物を3~5本作ります。これもあまり固くねじると燃えにくいので、少しユルめに作ってください。
この上に、薪を置きます。
ライターで丸めた新聞紙に火を点けます。3か所ぐらいに火を点け、一気に火が回るようにします。
あとは、丸めた新聞紙→ねじった新聞紙→薪と火が点いていくよう、適宜空気を送ります。
レベル3 ナイフを使って小割を作る
焚き付け:紙、小割の薪
道具:ナイフ、ライター
レベル2までは、薪に直接火を点けるために、焚き付けを工夫していましたが、ナイフがあれば、薪を小割にして焚き付けにすることができます。
薪をナイフで割るには、バトニングと言われる方法を使います。
バトニングの方法
①薪を並べて簡易な薪割台を作る
②薪を立てて、ナイフの刃をあてる
③ナイフのスパイン(峰)を別の薪で叩いて割る
以上の手順で、割り箸ぐらの細さの薪を10本程度、太さ2~3cmの薪を5~6本ほど作ります。
あとは、紙を軽く丸めた物を3~5個作り、その上に細い薪、太さ2~3cmの薪と順番に置いて着火し、火の勢いが強くなったところで、普通の薪を足していきます。
尚、ここで紹介したバトニングは、あくまで杉のような簡単に割れる薪の割り方ですが、広葉樹のようなもっと固い薪を割ることも可能です。詳しくは、こちらをご覧ください。
レベル4 ファイヤースターターで本格的に
焚き付け:麻紐または脱脂綿、フェザースティック
道具:ナイフ、ファイヤースターター
レベル4からは、本格的な火起こしとなります。これがマスターできれば、どんな状況でも火を起こすことができるようになります。
ポイントは、小割にした薪をナイフで毛羽立たせ、フェザースティックを作ることにあります。
フェザースティックの作り方
①太さ2~3cmの小割の薪を用意する
レベル3で紹介したバトニングで、小割の薪を5本ほど用意します。
あまり細すぎると、フェザーを削る時に薪が折れてしまうので、割り箸よりも太目に割ってください。
②最初の切り込みを入れる
ナイフの刃を上から押さえつけるようにして削ります。
ナイフの刃は、薪に対し直角ではなく、少し角度を付ける方が、抵抗が少なく削りやすいです。
最初の切り込みは、深く入れることで、フェザーごと削り落としてしまうのを防ぐストッパーの役目を果たすことができます。
③フェザーを作っていく
フェザーを削り落とさないように、慎重に削っていきます。
薪の角を削るようにすると、比較的楽に削ることができます。
以上の手順で、フェザースティックを4~5本作ります。
私はいつも、今回ご紹介した片側だけ削るフェザースティックを作っていますが、薪の周囲を削って彼岸花のような形にする方法もあります。
要は、薪を毛羽立たせて燃えやすくすれば良いので、色々工夫しながら削ってもらえればと思います。
フェザースティックが用意できれば、あとは薪を組んでいきます。
先ず、焚き付けとなる脱脂綿またはほぐした麻紐を入れ、その上にフェザースティックを置きます。
この時に、フェザースティックを作る時に削り損なったカスなども乗せてしまいます。削りカスも立派な焚き付けです(笑)。
次に、太めの薪を1本差し渡します。
この上に、小割の薪を並べていきます。
薪を入れすぎると、ファイヤースターターで着火しづらくなるので、最初はあまり多く入れる必用はありません。
これで、ファイヤースターターで焚き付けに着火すれば、その上のフェザーに燃え広がっていきます。
フェザースティックの炎が小割の薪に移ったら、適宜小割の薪を足していき、火を大きく育てます。炎の勢いが出てきたら、順次太い薪を入れていきましょう。
レベル5 これができれば一人前!ブッシュクラフトの基本
焚き付け:フェザースティック
道具:ナイフ、ファイヤースターター
レベル4まで出来れば、あとは火口にもフェザースティックを使えば完璧です。
問題は、フェザースティックに直接ファイヤースターターで火を点けることです。
ファイヤースターターの火花は、瞬間温度が軽く1000度を超えるのですが、一瞬ですからこれでフェザーに火を点けるのは難易度が高いです。
ポイントは、とにかくフェザーを薄く削ることと、ストライカーの性能が良いファイヤースターターを使うことです。
ファイヤースターターについては、以前テストしていますので、参考にしてください。
以上、火起こしについて、難易度順に解説しましたが、いかがだったでしょうか?
ちなみに、私はいつもフェザースティックにライターで着火していますので、レベル3.5といったところです(笑)。
今回はレベル5までのご紹介でしたが、エクストラレベルとして、火打石、弓ぎり式火起こしなどがありますが、それはまた別の機会に(^_^;)
焚火で料理をするなど、より本格的な焚火をするには、広葉樹の薪がおすすめですが、火起こしについては針葉樹薪を使うのが定石ですので、上記の方法で火を大きくしてから広葉樹薪に移行すれば、失敗無く燃やすことができます。
火起こしは、慣れが必要ですから、もし失敗したら、もう一度最初からやり直すぐらいの心構えでやるのが肝心です。
最後に、絶対に燃えない物をいくつか挙げておきます。
焚火で絶対に燃やしてはいけない物
雑誌
紙なので燃えると勘違いされる人が多いのですが、雑誌はそのままでは全く燃えません。雑誌は、各ページがくっついていて、空気が含まれていませんので、大割の広葉樹薪よりも燃え難いです。燃やすためには、1ページ毎に剥がして丸めるなどして空気を含ませる必要があります。
そもそも、紙は大量の灰が出ますので、焚き付けに少量使う程度は良いですが、大量に燃やすのは止めましょう。
生木
生木は、水分を多く含んでいるため、とても燃え難いです。工夫すれば燃えなくはありませんが、大量の煙が出ますので、薪として使えないと思ってください。少なくとも焚き付けとしては使えませんので、キャンプ場などで焚き木を拾う時は注意してください。
廃材
廃材、特に建築廃材は、薪として使うべきではありません。建材は、歪み・割れ対策として、しっかり乾燥されているので燃えやすいのですが、一方で防腐・防虫処理されている場合があり、その場合は燃やすと有毒ガスが発生します。特に、ハウスメーカーが使っている建材は、カビや白アリ対策として薬剤を注入している場合が多く、燃やすべきではありません。
一方、昭和初期に建てられたような古い建物でも、白アリ対策として防虫剤を注入していたり、防腐剤を塗布していたりする場合があります。これらは、目で見ても分からないため、使わない方が無難です。また、廃材は釘などが入っている場合があり、後始末にも困ります。
最近のキャンプブームを当て込んで、廃材を薪として販売していることがありますが、安いからと言って買うのは控えてください。
プラスチック
そもそも、プラスチックを焚火で燃やすことはご法度ですが、例え燃やしてもまともに燃えないということを知っておいてください。
ペットボトルなどのプラスチックは、原料がナフサ(石油精製物質)なので燃えやすいと思われがちですが、私たちの身の回りのプラスチック材は、意外と燃えにくいです。これは、プラスチックの密度が低いからです。ペットボトルや弁当の容器などは、素材が薄く作られているため、容積当たりのプラスチック密度が低く、火が点いても温度が上がらないため、燃えにくいのです。同様に、カップ麺の容器などは、熱が伝わりにくくするために発泡加工されているため、こちらもプラスチック密度が低く、燃えにくいです。
それに、元が石油とは言え、プラスチックは日常的に使われる化学製品ですから、そもそも簡単には燃ないように工夫されています。
廃プラスチックは、一部のゴミ処理施設では燃料として使われていますが、その場合、廃プラスチックを高温高圧でペレット状に加工しています。そうしないと、プラスチックのままでは、密度が低くて燃料として使えないからです。
以上、魅惑の炎を眺めながら、キャンプという非日常を楽しんでください!!
より焚火を楽しみたいという方は、こちらもご一読頂ければ幸いです。
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