キャンプに限らず、アウトドアの場面では、火を使うことが多いです。お湯を沸かしたり、缶詰を温めるだけでも火が必要となりますので、ストーブは必須アイテムです。
釣り、特に磯釣りなどは、日の出前から磯に立ちますから、特に真冬は寒さに体が凍えます。そんな時、ストーブでお湯を沸かしてカップラーメンを食べると、体が温まって至福の一時を過ごすことができます。もっとも、私のように休憩してカップ麺を食べるのは軟弱者のすることで、強者は寸暇を惜しんでおにぎり片手に釣りをしています(苦笑)。
さて、ストーブと言えば今やガスが主流ですが、昔は(といっても40年近く前ですが)ホワイトガソリンと灯油がしのぎを削っていました。そんなストーブ界隈で、日陰者だったのがアルコールバーナー(アルコールストーブ)です。
最近でこそ、トランギアのアルコールバーナーが品切れになるほど人気がありますが、火力が低く、風に弱いアルコールバーナーは、ホエーブズなどの影に隠れて目立たない存在でした。ただ、軽くてコンパクトなため、極力装備を軽くしたい一部の登山者の間では重宝される存在でした。
アルコールバーナーには、液体と固形の2種類があります。
液体アルコールバーナー(solo stove) |
固形アルコールバーナー(Esbit) |
私も、小学生の時、親父からエスビットのポケットストーブを買ってもらい、持っているだけでワクワクしたのを覚えています。
さて、アルコールバーナーは、昔からサブ的な扱いだった一番の訳は、火力です。
確かに、シェラカップ1杯程度のお湯なら数分で沸きますが、リッター単位でお湯を沸かすのには向いていません。また、北アルプスなどのような2千メートル級の山では、夏でも気温が低く、お湯を沸かすのにも一苦労。
また、風に弱いため、屋外で使用する場合は風防などの工夫をする必要があります。
と、そんなアルコールバーナーですが、利点もあります。
それは、「音」です。
日が昇りだす5時頃、キャンプ場も静けさに包まれていますから、そんな中でガソリンストーブを「ゴーゴー」やるのは野暮と言うものです。
キャンプに来ると何故か早起きの私は、日の出と共に起き出してコーヒーを一杯やるのが定番となっていますが、そんな時にはアルコールバーナーが活躍します。
さて、火力が弱いアルコールバーナーですが、工夫次第である程度は高めることができます。
アルコールバーナーの火力は高さでコントロール
アルコールバーナーに限らず、バーナーには、なべ底との適正距離というものが存在します。距離が遠ければ、熱が周囲に逃げますし、近すぎると炎の火力を引き出すことができません。ここでは、特に液体用アルコールバーナーを例にとって解説します。
ガスストーブのような、バーナー部分に無数の穴が空いているタイプは、個々の炎が小さく、なべ底との距離が短くても最大化力を得ることができるように設計されています。
ところが、アルコールストーブは、中央の穴全体から炎が立ち上がるため、炎が大きく、バーナーからの距離をある程度とらないと、十分な火力を得ることができないのです。
アルコールバーナー定番と言われる、エスビットのポケットストーブとの組み合わせ。 バーナーからの距離が近すぎるため、火力が上がらない。 |
アルコールバーナーをお持ちの方は、シェラカップでお湯を沸かす時に、カップを上下すると沸き方が違うことがスグに解るので、一度やってみてください。
私は、色々考えた挙句、これはゴトクの問題ということに行き着き、色々と自作してみました。
アルコールバーナー用ゴトクの自作
その1「ダイソーのアルコールバーナー用ゴトク」
自作と言っても、複数個買ってきて色々と組み合わせを検討しただけです。
先ずは、市販品でどこまでいけるか、実験的にやってみました。
ダイソーのアルコールバーナー用ゴトクは、大小2種類が販売されていますが、こちらは大です。
シェラカップでお湯を沸かそうとすると、バーナーとの距離がとれないため、火力が出ません。
試しに、カップを持ち上げて距離を調整してみたのが下記の写真です。
そこで、2個組み合わせると、そこそこの高さが出るので、これならかなり火力が出ます。
一応、2個組み合わせるとそれなりの火力を得ることは可能ですが、見た目が大袈裟なのと、ゴトクが邪魔でフタをして消火できないので、アルコールを使い切るしかないというのが欠点です。
その2「筒形貯金箱」
火力的には、この方法が一番なのは最初から分かっていました。
筒形で、小型の焚火台のような構造になっているので、下から空気が入って、バーナーの熱が効率よく上から出るため、湯を沸かすのに適しています。
【作り方】
100円ショップで、アルコールバーナーの直径より少し大きめの、筒形のブリキ缶を買ってきます。
私は、ダイソーで売っていた貯金箱を使いました。
これに、先ず下側に空気穴をドリルで空けます。直径は5mm程度です。
上側には、下より大きな穴を空けます。私は直径1cmの穴を空けました。
これは、上部をカップなどで塞いでしまうと、空気の通りが悪くなって火が消えるのを防ぐためです。ただ、これは後から失敗だったことに気づきました。
底は、ステンレスの排水溝用目皿に、ボルトで足を付けて上げ底をします。
こうすることで、下穴から入った空気が上のバーナーにスムーズに供給されるようになります。
アルコールバーナーに点火した写真がこちら。
予想通り、かなりの高火力を得ることができました。
欠点は、シェラカップより貯金箱の直径が大きく、中にカップがハマってしまい、炎が横の穴から噴き出ることです。
そこで、同じくダイソーで購入した小型網をセット。
これで、火力的にはバッチリ。
シェラカップ1杯が、2~3分で沸きます。
ダイソーの小型網が、アルコールバーナーの炎で赤くなるぐらいですから、かなりの火力が出ています。
網と組み合わせて使うのなら、缶の上部に空けた穴は不要でした(苦笑)。
この筒形ゴトク、火力的には良いのですが、フタができないので消火できないのと、この缶自体が嵩張るので、アルコールバーナーのコンパクトという良さを台無しにしてしまいます(-_-;
ちなみに、ミニ焚き火台としても使えますので、まあ作った意味はありました(苦笑)。
その3「ステンレス製折り畳み式ゴトク」
さて、試行錯誤した結果、ゴトクの高さは、アルコールバーナーの上面から4cm程度が一番火力が出ることが分かりました。
そこで、その高さに合うように、専用のゴトクを作成することに。
【材料】
ステンレスプレート×2
ボルト×2
ナット×6
ステンレス棒(直径3mm)
【工具】
金切ノコゴリ
ペンチ×2
ガストーチ
【作り方】
先ず、ステンレス棒でゴトクの脚を作っていきます。
ステンレス棒を25cmの長さに切り、ガストーチで加熱して曲げ加工します。
ステンレス棒をバーナーで炙り、真っ赤になったところをペンチで曲げます。
脚の長さは8cm、幅5cmのコの字型にします。
コの字の端は、ボルトを差し込めるように丸く曲げます。
脚の曲げ加工が完了したら、ステンレスプレートに、ボルトを通して脚を取り付け、ナットで固定します。
完成形がこちら。エスビットのポケットストーブをバーナーのベースに使っています。
バーナーから理想的な距離がとれるため、最大火力を引き出すことができます。
お湯を沸かすだけでなく、メスティンでラーメンも作れます(^-^)
このゴトクは、折りたためるため、ポケットストーブ内に収納可能。とてもコンパクトになるのが特徴です。
このゴトクの欠点は、脚が外側に開かないようなストッパーが無いため、若干不安定なことです。
一応、エスビット本体を少しハの字に開いて、脚をそれに沿うように開くことで、ずれないようにしています。
風防は別途必要ですが、高さはバッチリなので、アルコールバーナーの最大化力を引き出せるようになりました。
番外編 BE-PALの付録「ブービーバード焚き火台SOLO」
色々工夫して作ったアルコールバーナー用ゴトクですが、アウトドア雑誌BE-PALの2021年7月号の付録「ブービーバード焚き火台SOLO」が、なんとアルコールバーナーにピッタリの大きさ!
高さも申し分無く、風防にもなるので、ある意味理想的なゴトクでした(苦笑)。
これなら、組み立て式なので嵩張らず、コンパクトでミニマルなアルコールバーナーにはピッタリです(^_^;
似たような商品が、Amazonでも売られているため、アルコールバーナーのゴトクにお悩みの方におすすめすます。
以上、私のアルコールバーナー活用術、いかがでしたか?
アルコールバーナーは、コンパクトで静かですから、キャンプ場の早朝だけでなく、森の中で鳥の声を聞きながらなど、とにかく静かに楽しみたい場面にピッタリです。
皆さんも、そんなアウトドアの場面を探して、是非アルコールバーナーを活用してみてください。