先日、何気なく某リユースショップに立ち寄った時、こいつを見つけてしまいました。
ツーバーナーの代表格、コールマンのパワーハウス 413Hです。
413シリーズの歴史は古く、発売は1930年頃に遡ります。初代413以降、小さな改良を重ねる度にA、B、Cと枝番が付けられ、現在販売されている413Hは9代目になります。9代目とは言え、初期の頃から基本構造は変わっておらず、90年以上に渡って販売され続けている413は、工業製品としては珍しい製品でもあります。
413Hは、中古市場でも比較的球数が多く、入手は容易ではありますが、状態の良い物は少ないイメージがあります。バーナーですから、どうしても調理中に吹きこぼれたり、油が飛んだりするので、汚れの目立つ物が多いです。また、鉄製のボディは凹みやすく、保管が悪い物は錆も酷かったりします。
一方で、デッドストックのような未使用品は、1万円以上の値段が付いており、413Hより以前のモデルについては、ヴィンテージ品として3万円以上の値段が付いていたりします。
今回、私が見つけた413Hは、ラベルが現行品とは異なり、PowerHouse 413としか書いておらず、一瞬お宝?と思ったのですが、蓋の裏に貼られている説明書きを見ると、413Hと書かれていました(ちょっと残念)。
説明書は全て英語。当時の輸入品かもしれない。 |
本体の裏面を確認すると、製造年は95年5月でした。今から26年も前の製品ですが、これでも現行品と全く同じ物です。
ある意味、スゴイですねェ・・・
状態はとても良く、バーナー周りも殆ど汚れはありません。
ゴトクの状態からして、殆ど使用されていないようです。
413Hの中古品は、油汚れなどが本体にこびりついていることが多いのですが、これはそういった汚れが無く、新品に近い状態です。
ボディ外側の状態も良く、一部に僅かに擦り傷がありますが、殆ど気にならないレベルです。
店頭で確認したところ、ポンプの状態も良く、試しにポンピングしてみるとしっかり空気が入りました。
ジェネレーターも、目立った煤汚れなど無く、状態は良さそうです。
ニップルの拡大写真。奥にクリーンニードルが見える。 |
驚いたのが、タンク内にホワイトガソリンが半分ぐらい残っていたことです。413Hは、タンクの構造が特殊で、ひっくり返してもガソリンがこぼれにくいようになっています。そのため、タンク内に残ったガソリンを取り出すためには、専用のガソリン抜き取りポンプを使うか、小型の灯油ポンプなどを使う必要があります。
タンク内に残っていたホワイトガソリン。コールマン製のホワイトガソリンは、青く着色されているのでそれと判る。 |
おそらく、前オーナーも店舗の担当者も、ガソリンが抜き取れず、そのまま販売されていたのだと思います。
そして、肝心の値段ですが、5,280円(税込)でした!
413Hは現行品ですから、定価28,800円で販売されています。それが、殆ど新品に近い状態の物が、5,280円で購入できたのですから、御の字です(笑)。26年も前の製品とは言え、構造が単純な413Hですから、製造の古さなんて問題になりません(笑)。
と言うことで、サルベージ決定!
私は、普段はガスバーナーのSOTO ST-310を使っており、ランタン類はケロシン(灯油)で統一しているため、ホワイトガソリンは使っていません。ですから、そもそもホワイトガソリンを使用する413Hは不要だったのですが、先日、実家からホエーブスなどのガソリンバーナーを発掘してきてしまったこともあって、導入ハードルが下がっていたことが購入に繋がってしまいました(笑)。
さて、購入したからには、早速点火試験です。
413Hは、プレヒートにガソリンの生ガスを使います。
要するに、液体状のガソリンをバーナーヘッドから直接噴射し、それに着火してジェネレーターを暖める訳ですが、ある意味合理的と言えるでしょう。
この、バーナーの上に長いジェネレータを通し、バーナーの熱でプレヒートするという構造を、90年以上前に考えついたのですから、流石はコールマン!?
余談ですが、昔は多くのガソリンバーナーで、初期のプレヒートにはアルコールなどの別の燃料が必要でした。生ガスを噴いて使うという使い方もありますが、安全性の面では、ジェル状のアルコール燃料を使ってプレヒートするのが主流でした。
現在のMSRなどの製品は、生ガスを噴射してプレヒートしますが、色々とコツが要るので、413Hに比べればハードルが高いです。
では、点火していきます。
点火試験前に、念のためタンク内の燃料を抜き取ってみたのですが、青く着色されたコールマン純正のホワイトガソリンで、状態も問題なさそうでしたので、そのまま使うことにしました。
左がタンク内に残っていた物、右が新品。色も匂いも、新品と変わらなかった。 |
先ずは、燃料バルブとサブバーナーのバルブが、しっかり閉まっていることを確認します。
サブバーナーのバルブは、本体左側に付いている。 |
その後、ポンピング開始。
ガソリンが満タンであれば、100~150回ぐらいでしょうか。
この時は、燃料が半分ぐらいしか入っていなかったので、200回以上ポンピングしました。
次に、点火バルブを上にします。点火バルブは、上にすると噴射する燃料が薄くなり、下にすると濃くなります。
プレヒート時には、燃料を薄くし、本格的な燃焼時に濃くします。
燃料バルブを1回転程回して開け、点火。
プレヒート時は、黄色い炎が上がりますが、次第に青い炎へと変わります。
青い炎になったら、点火バルブを下にして、燃料バルブで火力を調整して本格運転へ。
サブバーナーは、構造上、メインバーナーを点火していないと使えません。
メインバーナーから、サブバーナーへと管が通っており、サブバーナーの燃料バルブを開くと、その管を通ってガスが供給される仕組みとなっています。
そのため、サブバーナーを使うと、メインバーナーの火力が落ちるため、メインバーナーの燃料バルブを開いて火力調整をする必要があります。
ちょっと使い難いですが、メインバーナー側にしかジェネレーターが無いので、このような構造になっています。
逆に言うと、ガソリンのツーバーナーとしては、非常に構造が単純なため、壊れにくくメンテナンスがしやすいということになります。
ドイツ人なら、きっと、ジェネレーターを独立させ、左右どちらのバーナーにも均等にガスが供給されるようにして、バルブハンドルも前面左右に配置するように作ると思いますが、値段は3倍以上になるでしょう(笑)。
そういった意味でも、413Hはアメリカ人らしい合理性に従って設計されています(笑)。
こうゆう所も含めて、コールマンらしい製品に仕上がっている413H、私は好きですね~
消火に関しては、燃料バルブを閉じるだけです。但し、バルブを閉じても、ジェネレーターからミキシングパイプ内にかけて燃料が残っているため、数分間は燃え続けます。
炎は殆ど見えないが、僅かに燃えている。 慣れれば音で分かるようになる。 |
さて、私の購入した413Hですが、メインもサブも快調です。
やっぱり、ガソリンバーナーの音は良いです。
413Hは、慣れれば、ポンピングから点火まで、1分もかかりませんので、とても簡単に使いこなすことができます。
早速、キャンプで使ってみましたが、やっぱり使い勝手がいいです。
特に、手早く用意したい朝食では、簡単にセッティングできるツーバーナーは便利です。
ゴトクが広いので、26cmのフライパンでも楽々乗りますし、とても安定しているので、自宅のガス台と同じ感覚で調理ができます。
いつもは、ガスバーナーのST-310を使っているのですが、ゴトクが小さいので、誤ってフライパンをひっくり返してしまったことが何度かあります(苦笑)。
惜しむらくは、ゴトクの幅が広いため、同じコールマン製なのにケトルの座りが悪いです(苦笑)。
さて、413Hの唯一の弱点は、この大きさでしょう。
収納サイズが、56×35×16cmと大きく、荷物の多いキャンパーにとっては、かなり車載容量を食います。
一応、強度はそれなりにあるので、上に物を積み重ねることはできますが、ボディが凹んだりすることを考えると、あまり積極的にはやりたくありません(苦笑)。
気温に左右されないガソリンバーナーですから、冬キャンプ、特に雪中キャンプで使いたいところですが、冬は装備が多いので、この大きさは悩ましいです。
うーん、困った!
(^_^;