ガスランタンと言えば、一般的にはコールマンのノーススターに代表されるマントルを使う物のことを指しますが、ガスに直接着火して炎を楽しむガスランタンがあります。
この、直接着火するガスランタンは、マントル式に比べれば暗いですから、照明には向きませんが、炎の揺らめきを楽しむことができるため、最近人気を博しています。
加圧式ケロシンランタンとハリケーンランタンの関係と同じく、照明としてはマントル式、雰囲気なら直接着火式と、同じ燃料(ガス缶)が共用できるのもポイントです。
もっとも、最近はLEDランタンが主流となったため、ガスランタンと言うとむしろこっちを指すようになってきた感があります。
この、直接着火するガスランタンは、コールマンのルミエールランタンと、スノーピークのリトルランプ ノクターン(以下ノクターン)が最もポピュラーな製品です。今回は、この2つについて徹底的に比較していきたいと思います。
コールマン ルミエールランタン
ホヤの形が、アンティークのオイルランプのような形をしたガスランタンです。ゆるキャン△で主人公の「各務原なでしこ」が、バイトしてこのランタンを買ったことから、最近益々人気が高まっているようです(笑)。
ホヤの色は、無色ではなく僅かに茶色がかっています。
ホヤの厚みは約2mmで、重さは68g。
ホヤは、くの字型のピンで台座に固定する形で、一見頼りなさそうに見えますが、バネが強く、しっかり固定されています。
台座は、一見ブロンズに見えますが、ガス口周りとホヤを支える部分以外は、バルブハンドルも含めてプラスチックです。
注意点としては、ホヤを持ってガス缶にねじ込んではいけないことです。ホヤの形状が特殊で、ガス量を調節するレバー部分が4角形になっており、ホヤを持って回すとこの部分に力がかかって割れてしまいます。
ホヤ(写真右)の下側が四角く切り欠かれている。 |
切り欠き部分に台座の金具があたる構造になっているため、ホヤを持ってねじ込むと、簡単に割れてしまう。 |
実は、娘が小学生の時、誤ってホヤを持ってねじ込んでしまい、見事に割れてしまいました。ホヤは別売されていますが、3,000円ほどしますから結構イタイです(苦笑)。
このホヤの形状は、正直コールマンの設計ミスです。私は、ヴィンテージのオイルランプなども所有していますが、こんな形状のホヤは見たことがありません。購入時に、ホヤを持たないようにとの注意書きのシールが貼ってありましたが、人間の心理として、ホヤを持ってねじ込んでしまうのは無理からぬことですから、通常のオイルランプ同様、単純な挿し込み式にしておくべきです。
着火は、ガス調整レバーの隙間からライターなどで着火します。
この時、ガス調整レバーは最小にしておきます。
ガス調整レバーは左側が最小。 |
その後、バルブを全開近くに開いて、着火します。
着火後、炎の大きさをある程度バルブハンドルで調整し、最後にガス調整レバーで微調整します。
これぐらいが標準。 |
火を大きくし過ぎると、大量の煤が出る。 |
ガス調整レバーを最大にすると、炎がホヤの上まで達するほど大きくなりますが、煤も出るので、ロウソクより少し大きいぐらいがベストです。
ケースは、プラスチックのハードケースが付属しています。
内部はスポンジなどでガードされていませんので、あまり強い衝撃は与えない方がベターです。
スノーピーク リトルランプ ノクターン
台座のバーナー部分からホヤまで、シンプルな円筒形をしたガスランタンです。
ロウソクのような炎を楽しむことに特化した、コンパクトでモダンなデザインは、流石はスノーピークです。
ホヤは透明で、厚さ約2mm、重さ29gと、小型の割に厚みと重さがあるので、強度的にも安心感があります。
台座は、アルミ削り出しで、重厚感があります。
台座にはゴムパッキンが2本入っており、これでホヤを留めています。単純な構造ですが、かなり強力に留まっているので、簡単には外れません。
ホヤの上には、金属のリングが嵌め込まれていますが、これはグローブガードです。
スノーピークに問い合わせてみたところ、これはグローブ(ホヤ)の割れ防止のためのガードとのことで、燃焼試験等では常にグローブガードを付けた状態で検証をしており、取り外さずにご使用くださいとのことでした。
自己責任にはなりますが、グローブガードを外すと、よりロウソクに近い雰囲気を楽しむことができます。
ノクターン特有の問題として、使用しているとバーナー部分に緑青が出ます。
恐らく、バーナー部分の銅が、ガス燃焼時に発生する水で錆びるのだと思いますが、これはトラブルになるほどではありません。気が付いたときに、綿棒などで拭き取れば大丈夫です。
点火は、台座の切り欠き部分にライターなどの火をあてながら、後ろのバルブを開きます。
ノクターンは、良い意味でもガスの出る量が少なく、バルブを全開にしていても着火し難いので、私は、上から点火することが多いです。
但し、この着火方法は、ホヤ内に溜まったガスに一気に点火するので、場合によっては「ボン!」と大きな音が鳴り、その爆発力で逆に火が消えてしまうこともあります。ですので、特に上から着火する場合は、慎重に着火してください。
着火後は、火力調整ダイヤルを回転させて微調整します。
標準。 |
最大。 |
ノクターンは、ルミエールほどガスの出る量が多くないので、あまり大きな炎にはなりませんが、それでもバルブ最大で火力調整ダイヤルも最大にすると、それなりに煤が出ますので、大きくし過ぎないようにしましょう。
ケースは、プラスチックのハードケースが付属しています。
こういった細かい所まで手を抜かないのが、スノーピークの良さです。
ルミエールとノクターンを比較
大きさ
大きさは、見ての通り、ほぼ2倍の差があります。
ルミエール:73×60×183(h)mm、重量210g
ノクターン:42×40×105(h)mm、重量102g
ケースの大きからして、これだけの差があります。
まあ、基本的にスペックで選ぶような品物では無いので、デザイン優先で選ぶべきですが、サイズ感としてはかなり違います。
光量
基本的にはそれほど大きく変わりません。
ルミエールの方が、ガス口の径が大きいので、炎も大きくできるため、多少は明るいですが、それほど気になる差ではありません。
むしろ、炎の形やゆらめき具合の方が重要ですが、美しさの点では甲乙つけ難いです。
燃焼時間
燃焼時間は、いずれもそれほど変わりません。
ルミエール:約28~38時間(230g缶)
ノクターン:約35時間(220g缶)
いずれも、ガスに直接着火するタイプですから、光量に変わりがなければ、燃費も同様となります。そもそも、この2つのランタンで燃費を競うのは無意味ですが、一応参考までに。
その他
実は、OD缶への接合部分に差があります。
ルミエールは、缶に差し込むピン自体がガスの導管になっているタイプで、ノクターンは、ピンとは別にガス穴が空いています。
ルミエールは、ピンにガス穴が空いている。 |
ノクターンは、ピンとは別にガス穴が空いている。 |
この構造の違いで、ルミエールは、缶にねじ込む最中に若干のガス漏れがありますが、ノクターンは殆どありません。気にするほどのことではありませんが、こんな些細なところでも違いがあるのが面白いです。
以上、ルミエールとノクターンの比較でした。どちらも雰囲気の良いガスランタンですから、購入して損はありません。
コールマンのホヤには、決定的な設計ミスと言える弱点がありますが、それを除けばレトロな雰囲気がとても魅力的です。
ノクターンは、モダンなデザインで、炎を静かに楽しむことに特化しているのが好印象です。正にノクターン(夜想曲)という名に相応しく、キャンプの夜をまったり過ごすのに良いです。
ちなみに私は、この2つを組み合わせて、こんな使い方をしています。
OD缶の分岐アダプターを使って、アンティーク燭台のような雰囲気にしています。
ルミエール+ノクターン2つで、かなり明るくなります。雰囲気も、ノクターンではなく、ロンド(輪舞曲)ですが(苦笑)。
まあ、ここまでしなくても、折角ですからOD缶カバーぐらいは使うことをおすすめします。私のおすすめは、真鍮製のOD缶カバーです。
サイズは少し余裕を持って作られているため、250gのOD缶であれば、何処のメーカーの物でも使えます。
収納についてですが、割れ物ということもあり、私はTRUSCO(トラスコ)のプロテクターツールケース(Lサイズ)を使っています。
このケースは、頑丈なだけでなく、ウレタンフォームが詰まっているので、とても衝撃に強いのが特徴です。元々は、カメラなどの精密機器を入れるためのケースですから、いささかオーバースペックですが、今回ご紹介したガスランタン類をまとめて入れられるので、私は重宝しています。
これに、OD缶+カバー×2、ルミエール×2、ノクターン×4、分岐アダプター×2が入ります。
さて、これまで炎を楽しむガスランタンは、ルミエールとノクターンの2つだけでしたが、今年(2021年)から新たに、Hinoto (ひのと)が加わりました。
一見、ノクターンのパクリに見えますが、バーナー部分が特殊な形状をしており、バーナーメーカー(SOTO:新富士バーナー)らしさが伺えます。
そして、極めつけは、小型のガスボンベが付属しており、CB缶からガスを注入することができることです。
生憎、発売以来品薄状態が続いており、Amazonや楽天で定価の倍近い値段が付いています(最近はこんなんばっかり)。
こちらも、値段が落ち着き次第、入手したいのですが、いつのことになるのやら(苦笑)。