ステンレス製で耐久性が高く、単なるコップとしてだけでなく、直火で調理にも使える万能カップです。
最近は、チタン製や、真鍮製、銅製など様々な素材のシェラカップが登場。サイズも大小様々です。
アウトドアショップの店頭には様々なシェラカップが並んでいる |
今回は、そんなシェラカップに焦点を当てて、歴史的経緯から使い方まで、色々とご紹介したいと思います。
シエラクラブとシエラクラブカップ
出典:amazon |
シェラカップのルーツは、シエラクラブ(Sierra Club)が会員向けに制作したシエラクラブカップ(Sierra club cup)にあります。シエラクラブ(Sierra Club)は、ジョン・ミューア(初代会長)により、1892年5月28日に米国カリフォルニア州サンフランシスコ市で創設された自然保護団体です。ミューアは、シエラネバダ山脈の保全に始まり、放牧と森林伐採が進んでいたヨセミテを、連邦政府の保護下に置くよう政府に働きかけ、国立公園とするなど、「自然保護の父」と呼ばれる人物です。ミューアはまた、ヨセミテ国立公園の管理を連邦政府が行うよう働きかけるに当たって、セオドア・ルーズベルト大統領と3日間のキャンプを行うなど、アウトドア活動にも積極的でした。ですから、シエラクラブも、自然保護を目的とした積極的なアウトドア活動を展開し、現在でも、自然との共生の重要性を訴えるための教育・啓蒙活動を行っています。
さて、オリジナルのシエラクラブカップには、会員番号が刻印されていました。このカップは、各会員が登山やキャンプなどのアウトドア活動で使えるようにと、便利で耐久性に富んだカップとして作られたので、大変人気がありました。あまりに人気が高かったため、シエラクラブは、活動資金の一助とするために、一般向けに会員番号の刻印が入っていないカップを販売することになります。これが、現在シェラカップとして一般に流通している物に繋がっていったのです。
高い汎用性を誇るシェラカップ
さて、シェラカップはシエラクラブカップをルーツに持つため、形状やサイズがある意味統一されています。容量は300ml前後で、開口部が12cm、針金のハンドルがカップ周りを1周しており、本体に折り込まれた構造になっています。そのため、メーカーが異なっても、重ねて収納することができます。
シェラカップには、大抵目盛りが入っているので、計量カップとしても使えます。特に、日本のメーカーの物は、90ml(半合)、180ml(1合)などの目盛りが入っており、米を計るのにも便利です。
また、ハンドル含めて全て金属製のため、焚火でも使えるなど、高い汎用性を誇ります。そのため、湯を沸かす、目玉焼きやベーコン炒めを作る、味噌汁などの汁物を作るなど、沸かす、炒める、煮るなど、様々な調理に使えます。
ちなみに、私は薪ストーブの上に置いてホットワインを作るのが大好きです。
さて、そんな耐久性と汎用性を誇るシェラカップですから、いくつかのアレンジをご紹介します。
炊飯
アウトドアでは、わりと有名な使い方です。
シェラカップで丁度半合のごはんを炊くことができます。
これが本当の半合炊飯(はんごうすいはん)!
【作り方】
- 半合分(90ml)の米を入れる
- 水110ml(無洗米なら120ml)を別のシェラカップで測って入れる
- 30分~1時間ほど放置して水を米に吸わせる
- アルミホイルか専用リッドで蓋をする
- 弱火でゆっくり沸騰させる
- 沸騰したら弱火のまま10~15分煮る
- 水蒸気が出なくなって、チリチリと米の焦げ出す音が聞こえたら火を止める
- タオルなどで包んで10分蒸らす
ポイントは、水を少し多めに入れることです。本来は1合あたり200ml(無洗米なら220ml)ぐらいが丁度良いのですが、シェラカップは気密性に劣るため、吹きこぼれが多いので、多めの水で炊くと芯ができ難いです。
蒸し器
特に冬のキャンプで食べたくなるのが、豚まん(肉まん)です。某キャンプ漫画で、ホットサンドでカリカリに焼き上げるのが有名になってしまいましたが、やっぱりふっくら蒸した熱々を食べたくなります。
そこで、シェラカップを蒸し器として使って豚まんを蒸します。
※写真はミニ豚まんです。コンビニの豚まんは、種類によってはカップに収まらない場合があります。
【作り方】
まず、シェラカップを2個用意します。
次に、蒸すためにシェラカップに合う網を用意します。小型の焼き網でも良いですし、私は6インチのスキレット用ロストルを使っています。
シェラカップに、50~100mlほどの水を入れ、網を乗せます。
その上に、豚まんをのせ、シェラカップをかぶせます。
あとは、バーナーで5分ほど加熱すれば、ふっくらと蒸しあがります。
スモーカー
本格的なスモークをするのは面倒。だけど、ビールの肴にちょっとスモークの効いた燻製を食べたい。なんてことあると思います。
そんな時におすすめしたいのが、シェラカップを使った燻製です。
【作り方】
用意するのは、蒸し器と同様、シェラカップ2個と、網です。
燻煙材としては、スモークウッドを使います。スモークウッドは、火を付けると燃え続けてくれるので、加熱する必要がありません。
スモークチップの場合は、下から加熱するか、中に炭を一緒に入れて燃やす必要があるので、シェラカップでのスモークには向きません。
シェラカップの中に、スモークウッドを3cm程度の大きさに切って入れ、火を付けます。この時、しっかりと火が付くように上面全体をポケットトーチなどで炙ります。スモークウッドは、意外と火が消えやすいので、しっかりと火が付くまで炙りましょう。
その上に網を置き、スモークしたい食材を置きます。
おすすめは、チーズ、缶詰のソーセージ、ナッツ類です。
あとは、シェラカップをかぶせて、10分ほどいぶすと、スモーキーな燻製が完成します。
本格的な温燻や冷燻は、時間と手間がかかりますが、シェラカップを使った燻製なら手軽にできますので、おすすめです。
ミニ焚火台
特にステンレス製のシェラカップは、耐熱性が高いので、焚火台としても使えます。
通気性が良くないので、火を点けるだけでも意外と難しく、難易度は高いです。ですから、シェラカップで焚火ができるようになれば、間違いなく焚き火スキルがアップします(笑)。
焚火台としては小さいので、本格的な焚火とはいきませんが、松ぼっくりなどを入れてキャンドル感覚で楽しむのには丁度良いサイズです。
シェラカップは、アウトドアグッズの中では、比較的安くて、耐久性が高いので、皆さんも遠慮なくガシガシ使ってみてください!!
【出典】
シエラクラブ
ジョン・ミューア
ヨセミテ公園