ONTARIO(オンタリオ) RAT-5【汎用性と耐久性を備えたサバイバルナイフの基本形】

2020年2月17日

ナイフ沼

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オンタリオナイフカンパニー(OKC)は、1889年に設立された、米国ニューヨーク州北部の刃物・工具メーカーです。 OKCは、カトラリーや台所用品、狩猟用ナイフやアウトドアナイフ、マチェット、サバイバル・レスキュー用具、医療用ツール、タクティカルナイフなど、幅広いツールを生産しています。
特に、OKCは米国軍の主要なサプライヤーですので、数多くのタクティカルナイフを製造しており、今回ご紹介するRAT-5もどちらかと言えばその流れに入るナイフです。


RATについて

RATは、Randall's Adventure and Trainingの略で、Jeff Randall(ジェフ・ランドール)とMike Perrin(マイク・ぺリン)が設立したアウトドア・サバイバル養成学校です。RATは、米国内だけでなくアマゾンのジャングルなど、過酷な環境で様々なトレーニングを行っており、参加者は軍事関係者や映画関係者、更にはプロの冒険家にまで及んでいます。
RATのトレーニングコースは、親子を対象としたアウトドア教室から、本格的なレスキュー訓練まで多岐に渡っており、ジャングルでのサバイバル訓練などは、マチェット1本で毎晩シェルターを作りながら、筏を作って川下りをするという、かなり過酷なコースになっています。

RAT-5について

そんなサバイバル訓練のプロであるランドール達が開発に携わったのが、オンタリオのRATシリーズです。オンタリオの2018-2019カタログを見ると、RATシリーズは全長20.1cm・刃長9.8cmから、全長42.2cm・刃長26cmまで、6種類のナイフがラインアップされています。そんな中でRAT-5は、全長26.5・刃長12.7と標準的な大きさに入るナイフです。
RAT-5は、米国製タクティカルナイフではお馴染みの1095高炭素鋼が使われており、硬度は57~59HRCと炭素鋼のナイフとしては少し硬めに仕上げられています。炭素鋼は錆びやすいため、ブラックコーティングで仕上げられており、これが見た目のイカツさにもつながっています(苦笑)。
グリップエンドには、この手のタクティカルナイフの定石通りグラスブレイカーが付けられています。まあ、日本ではこのナイフを車のダッシュボードに入れておくと、銃刀法違反で捕まるでしょうが・・・。


シースは、ナイロンシースで、プラスチック製のインナーがセットされています。



では、詳細のレビューに移りたいと思います。

切れ味


硬度が高く切れ味が良いという、高炭素鋼の見本のような切れ味と言えます。箱出しでは若干グラインドが雑なので、コピー用紙を切ると引っ掛かりを感じますが、少し研いでやれば充分な切れ味を発揮します。セカンダリーエッジが約30度ですので、汎用的なナイフとして切れ味と耐久性のバランスが良い角度だと言えます。


刃厚は、私の持っている物をノギスで測ると、5mm弱と結構な厚みがありますが、刃幅が40mmと広いフラットグラインドですので、プライマリーエッジ角は6度と結構鋭角です。そのため、ダンボールなどを切っても刃厚の割には抵抗が少なく、良く切れるナイフです。
但し、ブラックパウダーコーティングは、お世辞にも良いとは言えず、ダンボールを切っているだけでも擦れた跡が残ります。

耐久性

耐久性は結構高く、モーラのコンパニオンMGに比べても、RAT-5の方が刃持ちが良いと感じました。硬度もそこそこ高いためか、耐摩耗性に優れ、切れ味が落ちにくいのだと思います。また、高硬度のステンレス鋼などに比べれば、圧倒的に研ぎやすい炭素鋼ですので、切れ味が落ちても少し研いでやれば復活します。


構造はフルタングで、刃厚も約5mmあるため、ハードなバトニングによる薪割にも耐えてくれます。ただ、エッジ角が鋭角なため、割り広げる力が弱く、特にケヤキなどの硬くて繊維質な薪は苦戦を強いられます。また、大きめのフィンガーチョイルがあるため、刃長が実質110mmと若干短いこともあり、KA-BARのBK2などに比べるとバトニング性能には劣ります。(詳細はこちら

握りやすさ・取り回し


ハンドルは、両サイドはフラットで、指側は中央が膨らんだデザインです。私の手は、日本人としては標準的なサイズだと思うのですが、少し大きく感じます。バークリバーやファルクニーベンなどは、両サイドに対しても若干の膨らみがあり、全体としては細身に仕上げられており握りやすいのですが、それに比べるとRAT-5はけっこう大ぶりです。


ハンドルの材質は、キャンバスマイカルタですが、表面がザラザラに仕上げられており、滑りにくくなっています。ただ、表面が水分を吸って変色するので、手汗の多い私が握ると写真の通りとなります。


まあ、乾燥すれば元通りですのであまり気にすることは無いと思いますが、つるつるに仕上げられたマイカルタハンドルに慣れていると、最初は違和感を感じます。


フィンガーチョイルが設けられているので、チョイルに指を掛ければ細かい作業もそれなりにこなせます。重量バランスは、ややハンドル側になりますが、むしろこのサイズのナイフであればこれぐらいの方が取り回しには有利だと感じます。


グリップエンド付近を持って、チョッピングすることもできますが、サイズ的にもチョッピングには向いていないので、取り回しを優先した重量バランスには好感が持てます。

使い勝手


ブレード形状は、典型的なドロップポイントで、刃厚の割にはエッジ角度が鋭角ということもあり、玉ねぎを切ったり、魚を捌いたりという使い方もできるナイフです。コーティングは、きめ細かく、滑りも悪くないので、肉のスライスなどにも結構使えます。
ただ、刃幅が40mmと広いので、普段の料理ではペティナイフを多用している私には、大きすぎると感じます。大柄なハンドルと、330gという重量とも相まって、ファルクニーベンF1などのより汎用性の高いナイフに比べると、使い勝手としてはやや劣る感じがします。
フェザースティック作りにおいても同様で、作れはしますが得意では無いという感じでしょうか。

総評

RAT-5は、5mm近い刃厚といい、グリップエンドのグラスブレイカーといい、かなりサバイバルを意識したデザインに仕上がっています。重量も330gと、ファルクニーベンF1の2倍以上ですので、かなりのハードユースにも耐えられる設計になっています。一般的には粘りの面で不利な高炭素鋼ですが、これだけの刃厚と刃幅があれば、バトニングによる薪割でもそうそう折れることは無いでしょう。
但し、ハンドルも含めて大ぶりのデザインは、耐久性と取り回しがトレードオフの関係にありますので、どちらを優先するかは好み次第というところでしょうか。

オンタリオのカタログでは、RATシリーズは「作業現場やキャンプなどで使うことを想定したEDC(Every Day Carry)ナイフ」だそうですが、刃長13cm近いこのごっついナイフを毎日持ち歩くのは、たとえ銃刀法が無くてもどうかと思います(苦笑)。



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