確かに、子供の友人の親の中には、「自然=危険」というイメージを持っているという人がいると、嫁からも聞いていましたので、そういう誤解を解くためにも、今回は親子で自然を楽しむためのポイントをまとめたいと思います。
3歳で釣りデビュー
私の娘は、3歳で既に岸壁でアジを釣っていました。勿論、ライフジャケットを付けさせ、常に私と嫁が横についていました。
釣り座も、万が一落ちても大丈夫なように、水面から1.5m程度の高さの場所を選び、近くに上がれる場所もある所を選んでいます。海水浴場に隣接した小さな漁港の湾内ですので、流されることもありません。
また、バケツに海水を入れて長めのロープを結んだものを用意しておきます。仮に、海に落ちて岸壁から離れても、海水が入ったバケツは重量があるので、ある程度の距離を投げることができ、そのバケツに捕ませらればロープでたぐり寄せることができます。
最悪は、私がバケツを持って飛び込めば助けることが可能です。
一方、子供には、海に落ちる危険性、釣り針に気を付けること、何かあったら竿を放して岸壁から離れることを教えておきます。むろん、3歳の子供が十分理解するのは不可能ですが、岸壁から水面までの高さを見せたりすることで、恐怖心を感じさせ、行動にある程度の自制を効かせます。
とは言え、このへんは子供の性格に大きく左右されるので、怖がらない子は全く怖がりませんが(私がそうでした)。
実際に釣りをするとなると、3歳児の運動能力ではやはり上手く行きません。当然、大人の手を借りながらと言うことになりますが、それでもサビキ(アジやイワシを釣るための仕掛け)を海に投げ込んで竿を渡してやると、結構釣れるものです。釣りあげれば、喜んで「釣れたー!」を連呼していました。釣れたばかりの魚を触るのも初めてですが、針から外すのは背ビレなどが手に刺さると危険なので、そこは大人がやります。
さて、私が3歳の娘を釣りデビューさせるにあたりいくつか心がけたことがあります。
先ずは、事前にリスク管理を行うことです。釣る場所の選定、ライフジャケットなどの安全装備、落ちた場合のバケツなど、事前にできる限りの危険を想定して対処しています。
次に、子供に事前に言い聞かせておくことです。十分に理解するのは無理にしても、全く知らないのと知っているのでは大きく違いますし、ある程度の恐怖心を起こさせることが出来れば、子供自身が注意するようになります。
あとは、それとなく様子を見ながら、子供と一緒に楽しむことです。これが一番重要で、親子で楽しむことで、子供の経験値が上がっていきます。多少怪我はするでしょうが、そんなことを気にしていては、子供も成長しません。針で手を刺して痛みを知ることで、針の危険性と特徴(魚を掛けるには尖った針が必要)を理解することができるのです。
自然を体感するということ
では、ここまでしてまで、子供と釣りをすることに意味があるのでしょうか。私は、「ある」と思っています。
私も、子供の頃から父に連れられてアジ釣りに行っていたことを覚えています。
竿の振り方、えさの付け方、釣れた魚を針から外す方法など、様々なことを経験したことが、今の生活につながっていると思っています(勿論釣りだけではありません)。
たかが釣りですが、生き物を触る、海の危険性を感じる、釣りの面白さを知るなど、様々な学びがあります。
3歳の頃から釣りをしていた娘ですので、キャンプに行っても、虫を捕まえたり、花輪を作ったりと、自然の中で飽きずに遊んでいます。以前、キャンプ場のいたる所を掘り返していたので、何をしているのかと聞くと「ミミズ捕まえてんの!ほら、いっぱいとれたで~」と言われ苦笑したのを覚えています。近くに川があれば、釣りエサに使えたのですが(笑)。
最近では、薪割や火熾しにも興味を持ち始めて、手あたり次第に薪を削って大量の着火材を作っています。私が焚火台で火熾しをしていると、隣にやってきてミニ焚火台で自分も火熾しに挑戦します。流石にフェザースティックにファイヤースチールで火を付けるとまではいきませんが、脱脂綿を着火材にして点火するぐらいはできるようになりました。
以上のように、キャンプや釣りなどのアウトドア活動を通じて様々な体験をすることは、子供にとってもとても重要な体験だと思います。手を切らなければ刃物の危険性に気づかないでしょうし、火傷をして初めて火の熱さを知ることが出来ます。このような体験が、子供の感受性を広げ、人生の中で役に立っていくと私は思います。
自然と向き合う上でのリスク管理
自然は危険か?と問われれば、やはり私は危険だと答えるでしょう。それは、人間は文明の中で生活をしている動物だからです。養老孟司先生の唯脳論を紐解くまでもありませんが、そもそも、私たち人間が住む街は、リスクが自分たちで十分にコントロールできない自然界から逃れるために構築したシステムです。ですので、自然が人間にとって脅威であるということは自明であり、たまに地震や洪水といった人間の作ったシステムを破壊するような自然現象が起こると、私たちは自然の持つ力を改めて恐怖として認識します。そういったことが、自然への恐怖心を私たちに植え付けていると言えるでしょう。さて、こんな哲学的なことを別としても、自然は様々な危険を孕んでいます。山に出れば、ハチ、毒蛇、クマ、などの危険生物や、腐敗物が傷口から入ることによる破傷風などの病気、落石、滑落などによる切り傷、打撲、骨折など、挙げるときりがありません。ここでは全てのリスクに対する対処法は記載しませんが、基本的な考え方を身に付けておくことが最も重要ですので、それをまとめたいと思います。
キャンプに行く前にリスクについて知っておき、準備しておく
まずは、リスクを事前に知っておくことが重要です。これは行く場所によっても異なるので、特に子連れの場合のリスクを上げてみます。山林
蚊、ブユ、ハチなどの虫刺され対策として、薬、ポイズンリムーバーを用意しておく。長袖の着用などで刺されないようにすることも重要。ハチはアナフィラキーショックの心配があるので、もし刺されたら、できるだけポイズンリムーバーで毒を抜き、清水で洗い流して病院に。クマが出る可能性がある地域の場合は、熊鈴などの着用、目撃情報のあった地域には近づかない。
崖や、段差など、滑落の恐れがある場所は、子供の手を取るなどして注意。
川
溺れないように水深に注意。子供の膝上までの水深でも溺れる可能性はあります。流れが速い場所は絶対に近づかない(川に入らない)。膝下の水深程度でも簡単に流されてしまう。
ザーッと川の流れる音がするのは、かなり早い流れの川。
岩場は転んで頭を打つ可能性があるので、近づかないか、ヘルメットを着用する。
磯
必ず運動靴をはく。サンダルは、磯場の岩やフジツボなどでかかとを切るので厳禁(私の体験談)。浅く見えても深いので慎重に。
岩の間に足が挟まって抜けなくなる場合があるので、複雑な磯場は要注意。
高低差のある磯場は、滑落の危険性があるので近づかない(磯釣り師でもよく骨折してます)。
共通
火傷、けがなどの外傷:消毒薬(イソジン)、包帯、軟膏などのファーストエイドキットを常備する。特に夏は、体温計を常備し、子供の体温を測り熱中症に気をつける。遊んだ後に体温が下がらずに熱中症になる場合もあるので、体温を測る癖をつけておく。
ざっと上げてみましたが、他にも色々あると思います。特に、川は注意してください。毎年事故で多くの子供が亡くなっています。水泳ができても川の流れは強いので関係ありません。むしろ、水泳に自信がある子供の方が、恐怖心が少ないので危険です。
無理をしない
子供が遊びに夢中になるのは当然ですが、親も同じく夢中になってしまったりします。そういう時は事故になりやすいので、注意が必要です。例えば、渓流釣りをしている場合などでは、釣りに夢中になっていると、どんどん沢を登って行くことになります。釣り始めのポイントは浅くて流れも緩やかでも、移動していくうちに深い淵に出たり、急流になったりします。もう少し登るともっと釣れそうなどということが必ずありますが、そういう時に無理をすると、川の流れに足を取られて転倒して怪我をするなど、大きな事故につながります。
また、子供は自分が疲れていることに気が付きにくいので、表情や態度を見ながら、早めの休憩を取ることを心掛けてください。
心配しすぎない
自然の中には、すでに書いたように様々なリスクがあります。ですが、それを心配していては、自然を体験することが出来ません。要は事前準備が肝心ですので、しっかりした準備をした上で、多少の怪我などのトラブルは起こることを前提として対応することが重要です。子供に何かあったら・・・と心配しすぎると、子供ものびのびと自然に触れることが出来なくなり、キャンプに来た意味が無くなります。ここは、少しユルめに構えているぐらいで丁度いいでしょう。
たまに、子供にナイフを持たすことや、薪割をさせることを非常識と言う人がいますが、おおいにやるべきだと私は考えています。親がしっかりしたリスク管理を行う必要はありますが、薪割や火熾しは、キャンプでこそ体験できることですので、是非とも親子でやって欲しいです(安全な薪割についてはこちら)。
キャンプデビューは何歳が良いか?
これは、正直難しいです。最近の高規格キャンプ場は、手ぶらでもキャンプを楽しめるぐらいになっていますので、赤ちゃん連れでのキャンプも可能です。ただ、子供がある程度自立して自然を体感するということを考えると、私は3~4歳ぐらいからだと思います。3歳未満だと、歩くのにもおぼつかない状態ですので、常に目が離せません。また、怪我や虫に刺されたりというリスクを考えると、ある程度は親とのコミュニケーションが取れることが重要となります。ハチに刺されたのか、アブに噛まれたのかでは大きくリスクが違いますので、刺された虫が黄色か黒かぐらいは見分けて親に言えるぐらいの判断力とコミュニケーション力があると、かなり安心です。
子連れキャンプのまとめ
色々とリスクについて書きましたが、実際にはそれほど気にすることはありません。遠足や林間学校など、小学校でもアウトドア活動はありますし、そこで毎年事故が起こっているなんて話は聞いたことがありませんので、リスクはリスクとして認識しつつ、怖がり過ぎないことが重要です。- 事前にリスクについて理解し準備する
- 無理をしない
- 心配しすぎない
- 自然を体感する
- ナイフや火を使えるようになろう
子供にとって、火熾し、フェザースティック作り、水汲み、湯沸かしなど、あらゆることが遊びであり学びでもあるので、是非とも親子でキャンプを楽しんでください。