そんなバークリバーの代表的なナイフが、ブラボーシリーズです。
ブラボー1は、米国海兵隊からの要望を受けて開発されたナイフです。そう聞くと、映画ランボーで有名になったサバイバルナイフを思い出す方も多いと思いますが、海兵隊の要望は、戦闘用ではなく、サバイバル(生存性)としての機能を重視するということで、とにかく壊れにくく、あらゆる用途に使用できるというものでした。そのため、刃厚は5.5mmとこのサイズのナイフとしては破格の厚さを誇り、エッジはコンベックスグラインド(蛤刃)というハマグリを合わせた断面のように、刃の断面が膨らんでいる形状をしています。コンベックスグラインドは、エッジ角度が鈍角になるので切れ味には劣りますが、その分耐久性が高くなります。
一般的にサバイバルナイフと言われるナイフは、クリップポイントと言われるナイフ先端からスパイン(峰)側が反り返っていて、突き刺すのに有利な形状をしています。また、エッジもホローポイントという凹面状に削られた形状をしており、これは刃を鋭くできるので切れ味が向上します。このような形状のナイフは、刺す・切るという性能が高いので、確かに戦闘用としては優れているといえますが、本当の意味でのサバイバルという点では必ずしも優れているとは言えません。では、サバイバル~生き残る~という場面で考えると、木を切り倒す、薪を割る、穴を掘る、缶を開ける、ロープを切るなど、刺す・切るという性能より、耐久性が重視されることが判ると思います。海兵隊がサバイバルナイフとして、ブラボー1を開発させた理由がそこにあると思います。
さて、そんなブラボーシリーズですが、ベースのブラボー1以外にも刃長から4種類のバリエーションがあります。
最終的に私の選んだモデルは、ブラボー1.5 S35VN ナチュラルキャンバスマイカルタというモデルです。ブラボーは、A2という工具鋼がスタンダードですが、A2は事実上炭素鋼に属するため、錆びやすいという欠点があります。炭素量の多い鋼材は、硬度を高くすることが可能で、切れ味や刃持ちという点においてはステンレスより上とされています。ただ、近年の技術革新により、切れ味や耐摩耗性に優れたステンレス鋼材も多く出てきており、S35VNのような粉末冶金鋼(ふんまつやきんこう)という特殊鋼においては、とても高い切れ味を誇っているため、炭素鋼などのメリットが無くなってきつつあると私は考えています。
S35VNは、米国のクルーシブ社が開発した粉末冶金鋼で、靱性、耐摩耗性、耐食性に優れ、焼き入れ硬化性も高いため、非常に硬度の高い鋼材です。粉末冶金鋼は、粉末状の金属で、これを型に入れ焼結させて作成するため、金属粒子が非常に細かく、切れ味の良いナイフに仕上げることができるという特徴を持っています。粉末冶金鋼の弱点は、粉末を焼結しているため、割れやすい・欠けやすいという点ですが、S35VNはベースとなったS30Vにニオブを追加して靱性を上げてあるため、ナイフ鋼材としては非常に優れた性能を誇っています。
余談ですが、カスタムナイフの鋼材としてマニアの間で有名なカウリXというものがあるのですが、こちらは日本の大同特殊鋼が開発した粉末冶金鋼で、硬度はHRC66~68にも達し、正に最強の切れ味を誇るらしいので、いつか手に入れてみたい一品です。
ハンドルは、キャンバスマイカルタで、フルタング構造となっています。キャンバスマイカルタとは、キャンバス(綿布)を重ねた物をフェノール樹脂で固めたもので、手に吸い付くような触感があり、耐久性や耐水性も高く、ナイフのハンドル材としてはとても優秀な素材です。バークリバーのナイフは、マイカルタハンドル以外に天然素材の物もありますが、実用性からいえばマイカルタの方が優れているため、私はマイカルタを好んで使用しています。
さて、スペックの話はこれぐらいにして、実際の使用感をレビューしたいと思います。
ブレード表面は、鏡面仕上げとまではいかず、グラインド時の細かい糸状の線がブレード全体を覆っていますが、実用上全く問題ありません。観賞用ではなく実用一辺倒の質実剛健な作りで、私はむしろこちらの方が好みです。
また、トマトやレモンのような酸性の強い食材を切っても錆びないため、ラフな使い方にも耐えうる利便性があります。
ただ、耐久性が高い(耐摩耗性に優れている)ということは、研ぎにくいということでもあります。私は人口砥石を使っているのですが、仕上げ砥石で研ぐとキーキー音がなるほど硬く、研ぐのが大変です。また、コンベックスはブレード全体がカーブしているので、普通に包丁のような研ぎ方をしてしまうとカーブがなくなってしまうため、技術的にも研ぐのが難しいです。
比較的簡単に研ぐ方法としては、耐水サンドペーパーを使う方法があります。ゴムシートや固めのスポンジ材を敷いて、その上に耐水サンドペーパーを置いて両面テープなどで留めてその上で研ぎます。ゴムシートの下地が適度に凹むので、コンベックスのカーブに沿って研ぎあげることができます。800番、1500番、2000番と研ぎあげれば、箱出し以上の切れ味に仕上げることができます。
バークリバーのハンドルは、どれも中央部が膨らんだ形状に加工されており、手に吸い付くような感覚でとても握りやすいのが特徴です。ブラボー1.5も握りやすく、取り回しにおいてはとても良好な印象です。
但し、刃長が153mmあるので、ブレードヘビーな点は免れず、フェザースティックを作るなどの細かい作業では、もう少し小型のナイフに軍配が上がります(所詮は慣れなのでフェザースティックが作れないという意味ではありません)。
尚、ブラボーシリーズの共通点として、ランプという指の置き場があるのですが、これがとがっていて指が痛くなるのですが、皮手袋などをしているとこの方が安定して使えるので、私はランプ有りを好んで使っています。人によっては、ランプが嫌いで自分で削り取ってしまったりする人もいますが、そこまでするなら、ランプレスモデルもあるので、そちらをおススメします。こういった細かい仕様があるのも、セミカスタムと言われるバークリバーの特徴です。
ブレード形状としては、ポイントが若干下がっているのでドロップポイントと言えますが、スパインはほぼ直線になっており、エッジもポイントからのRがきつく、そのあと刃元付近にかけて少し細くなっています。ポイントもそれほど鋭角ではないので、良くも悪くも魚を捌くとき時などは、少しやりにくいです。出刃包丁と比べれば判るのですが、ポイントのRが緩やかなほど鋭くなるので、ブラボー1.5はそれに比べると鈍角なため、魚の腹を裂く時などの突き刺さりがイマイチとなります。但し、魚の頭を落とすなどの骨を切る動作では、抜群の切れ味を如何なく発揮してくれます。
野菜を切るときも、5.5mmの刃厚とコンベックスグラインドがあいまって、切るというよりは裂くという感覚になります(それでも切れ味が抜群なので、トマトでもつぶれることなく切れます)。
一方で、枝払いや薪割り(本当はあまりおススメしないのですが・・・)といったブッシュクラフト的な使い方に当たっては、抜群の威力を発揮します。枝払いなどは、ブレードヘビーなバランスと重量約270gの重さも相まって、正に鉈のような使い勝手が可能ですし、高い耐久性からバトニングでも安心して行うことができます。コンベックスグラインドは、斧と同じで切り裂く力が強いため、木を裂く・割るという作業にはやはり向いており、ブッシュクラフトな場面では大活躍してくれます。木の枝を地面に刺すために先端を削る場合などは、チョッピングで簡単に削れますし、太めの枝を折りたい場合も、チョッピングで削って折ることができるので、斧の代わりとしても使えます。
もしも、森に持っていく刃物として1本だけ選べと言われたら、私は迷わずブラボー1.5 S35VNと答えるでしょう。
ブラボーシリーズについて
ブラボー1は、米国海兵隊からの要望を受けて開発されたナイフです。そう聞くと、映画ランボーで有名になったサバイバルナイフを思い出す方も多いと思いますが、海兵隊の要望は、戦闘用ではなく、サバイバル(生存性)としての機能を重視するということで、とにかく壊れにくく、あらゆる用途に使用できるというものでした。そのため、刃厚は5.5mmとこのサイズのナイフとしては破格の厚さを誇り、エッジはコンベックスグラインド(蛤刃)というハマグリを合わせた断面のように、刃の断面が膨らんでいる形状をしています。コンベックスグラインドは、エッジ角度が鈍角になるので切れ味には劣りますが、その分耐久性が高くなります。
一般的にサバイバルナイフと言われるナイフは、クリップポイントと言われるナイフ先端からスパイン(峰)側が反り返っていて、突き刺すのに有利な形状をしています。また、エッジもホローポイントという凹面状に削られた形状をしており、これは刃を鋭くできるので切れ味が向上します。このような形状のナイフは、刺す・切るという性能が高いので、確かに戦闘用としては優れているといえますが、本当の意味でのサバイバルという点では必ずしも優れているとは言えません。では、サバイバル~生き残る~という場面で考えると、木を切り倒す、薪を割る、穴を掘る、缶を開ける、ロープを切るなど、刺す・切るという性能より、耐久性が重視されることが判ると思います。海兵隊がサバイバルナイフとして、ブラボー1を開発させた理由がそこにあると思います。
さて、そんなブラボーシリーズですが、ベースのブラボー1以外にも刃長から4種類のバリエーションがあります。
- ブラボー1:107mm
- ブラボー1.2:129mm
- ブラボー1.5:153mm
- ブラボー2:185mm
ブラボー1.5を選んだ理由
私がブラボー1.5を選んだのは、その絶妙の刃長にあります。ブラボー1の107mmという長さは、取り回しが良く、重量バランスもニュートラル(ナイフを握った時に人差し指の辺りに重心がある)なため、汎用性の高い長さです。ただ、キャンプ用途で考えると、包丁の代わりにも使いたいので、13cmは欲しい所です。また、バトニングによる薪割りを考慮すると、最大10cm程度の薪までは割りたいので、余裕をもって15㎝程度あると良いと考えました。一方で、ナイフは18㎝を超えてくると取り回しが悪くなり、腰に下げるにしても扱いづらいので、15㎝が限界となります。そのため、153mmの1.5が私にとって理想的な長さでした。付属のシースは、そのままではナイフが入らないため、水で濡らして革を柔らかくし、ナイフを差し込んで調整する必要がある。 |
最終的に私の選んだモデルは、ブラボー1.5 S35VN ナチュラルキャンバスマイカルタというモデルです。ブラボーは、A2という工具鋼がスタンダードですが、A2は事実上炭素鋼に属するため、錆びやすいという欠点があります。炭素量の多い鋼材は、硬度を高くすることが可能で、切れ味や刃持ちという点においてはステンレスより上とされています。ただ、近年の技術革新により、切れ味や耐摩耗性に優れたステンレス鋼材も多く出てきており、S35VNのような粉末冶金鋼(ふんまつやきんこう)という特殊鋼においては、とても高い切れ味を誇っているため、炭素鋼などのメリットが無くなってきつつあると私は考えています。
S35VNは、米国のクルーシブ社が開発した粉末冶金鋼で、靱性、耐摩耗性、耐食性に優れ、焼き入れ硬化性も高いため、非常に硬度の高い鋼材です。粉末冶金鋼は、粉末状の金属で、これを型に入れ焼結させて作成するため、金属粒子が非常に細かく、切れ味の良いナイフに仕上げることができるという特徴を持っています。粉末冶金鋼の弱点は、粉末を焼結しているため、割れやすい・欠けやすいという点ですが、S35VNはベースとなったS30Vにニオブを追加して靱性を上げてあるため、ナイフ鋼材としては非常に優れた性能を誇っています。
余談ですが、カスタムナイフの鋼材としてマニアの間で有名なカウリXというものがあるのですが、こちらは日本の大同特殊鋼が開発した粉末冶金鋼で、硬度はHRC66~68にも達し、正に最強の切れ味を誇るらしいので、いつか手に入れてみたい一品です。
ハンドルは、キャンバスマイカルタで、フルタング構造となっています。キャンバスマイカルタとは、キャンバス(綿布)を重ねた物をフェノール樹脂で固めたもので、手に吸い付くような触感があり、耐久性や耐水性も高く、ナイフのハンドル材としてはとても優秀な素材です。バークリバーのナイフは、マイカルタハンドル以外に天然素材の物もありますが、実用性からいえばマイカルタの方が優れているため、私はマイカルタを好んで使用しています。
さて、スペックの話はこれぐらいにして、実際の使用感をレビューしたいと思います。
切れ味
流石は粉末冶金鋼と言える切れ味です。切れ味という点では不利なコンベックスグラインドでも、すね毛が剃れるぐらい鋭いエッジに仕上がっています。また、バークリバーは、職人が1本1本研いでいるので、箱出しでも良く切れます。ブレード表面は、鏡面仕上げとまではいかず、グラインド時の細かい糸状の線がブレード全体を覆っていますが、実用上全く問題ありません。観賞用ではなく実用一辺倒の質実剛健な作りで、私はむしろこちらの方が好みです。
耐久性
高い硬度と耐摩耗性のS35VNですので刃持ちは良く、コンベックスグラインドと相まって、直径10㎝弱のナラを数本バトニングした程度では、ビクともしません。また、立ち枯れて折れた木(おそらくブナ)を見つけた時、薪材にするために、大人の手首ほどの太さの枝をチョッピングしましたが、こういった鉈代わりに使うような場面でも、チップ(刃欠け)やロール(刃のつぶれ)もなく、耐久性の高さを実感しました。また、トマトやレモンのような酸性の強い食材を切っても錆びないため、ラフな使い方にも耐えうる利便性があります。
ただ、耐久性が高い(耐摩耗性に優れている)ということは、研ぎにくいということでもあります。私は人口砥石を使っているのですが、仕上げ砥石で研ぐとキーキー音がなるほど硬く、研ぐのが大変です。また、コンベックスはブレード全体がカーブしているので、普通に包丁のような研ぎ方をしてしまうとカーブがなくなってしまうため、技術的にも研ぐのが難しいです。
比較的簡単に研ぐ方法としては、耐水サンドペーパーを使う方法があります。ゴムシートや固めのスポンジ材を敷いて、その上に耐水サンドペーパーを置いて両面テープなどで留めてその上で研ぎます。ゴムシートの下地が適度に凹むので、コンベックスのカーブに沿って研ぎあげることができます。800番、1500番、2000番と研ぎあげれば、箱出し以上の切れ味に仕上げることができます。
握りやすさ・取り回し
バークリバーのハンドルは、どれも中央部が膨らんだ形状に加工されており、手に吸い付くような感覚でとても握りやすいのが特徴です。ブラボー1.5も握りやすく、取り回しにおいてはとても良好な印象です。
但し、刃長が153mmあるので、ブレードヘビーな点は免れず、フェザースティックを作るなどの細かい作業では、もう少し小型のナイフに軍配が上がります(所詮は慣れなのでフェザースティックが作れないという意味ではありません)。
尚、ブラボーシリーズの共通点として、ランプという指の置き場があるのですが、これがとがっていて指が痛くなるのですが、皮手袋などをしているとこの方が安定して使えるので、私はランプ有りを好んで使っています。人によっては、ランプが嫌いで自分で削り取ってしまったりする人もいますが、そこまでするなら、ランプレスモデルもあるので、そちらをおススメします。こういった細かい仕様があるのも、セミカスタムと言われるバークリバーの特徴です。
使い勝手
ブレード形状としては、ポイントが若干下がっているのでドロップポイントと言えますが、スパインはほぼ直線になっており、エッジもポイントからのRがきつく、そのあと刃元付近にかけて少し細くなっています。ポイントもそれほど鋭角ではないので、良くも悪くも魚を捌くとき時などは、少しやりにくいです。出刃包丁と比べれば判るのですが、ポイントのRが緩やかなほど鋭くなるので、ブラボー1.5はそれに比べると鈍角なため、魚の腹を裂く時などの突き刺さりがイマイチとなります。但し、魚の頭を落とすなどの骨を切る動作では、抜群の切れ味を如何なく発揮してくれます。
野菜を切るときも、5.5mmの刃厚とコンベックスグラインドがあいまって、切るというよりは裂くという感覚になります(それでも切れ味が抜群なので、トマトでもつぶれることなく切れます)。
一方で、枝払いや薪割り(本当はあまりおススメしないのですが・・・)といったブッシュクラフト的な使い方に当たっては、抜群の威力を発揮します。枝払いなどは、ブレードヘビーなバランスと重量約270gの重さも相まって、正に鉈のような使い勝手が可能ですし、高い耐久性からバトニングでも安心して行うことができます。コンベックスグラインドは、斧と同じで切り裂く力が強いため、木を裂く・割るという作業にはやはり向いており、ブッシュクラフトな場面では大活躍してくれます。木の枝を地面に刺すために先端を削る場合などは、チョッピングで簡単に削れますし、太めの枝を折りたい場合も、チョッピングで削って折ることができるので、斧の代わりとしても使えます。
総評
ナイフ選びは、そのナイフに何をさせるかによって決まってきます。料理であれば包丁の方が良く、薪を割るなら斧の方が向いています。そういう点では、ブラボー1.5は斧や鉈から包丁まで、非常に広い範囲をカバーしてくれる、汎用性の高いナイフといえます。もしも、森に持っていく刃物として1本だけ選べと言われたら、私は迷わずブラボー1.5 S35VNと答えるでしょう。
リンク